本屋さんだった私

クライングフリーマン

本屋さんだった私

 本屋さんだった私。

 私は色んな仕事をしてきて、色んな黒歴史を紡いで来た。

 私は、人生で2度、本屋さんだったことがある。

 今回は、そんなお話。

 一度目は、実質的な経営者が「キャ〇レー王」と謳われ、テレビにも時々出てきたことがある、福〇太郎氏の、「ま〇が書店」。氏は、幼少の頃。漫〇が好きで、読みたくて堪らないのに、読めなかった。貸し本屋さんさえ行けなかった。貧しかったからである。

 面接の時。面接したのが、社長では無く、会長(福〇氏)。

 会長、もういいよね。45年も前の話だし。

 氏は、何故か実家が八百屋である私を気に入った。

 氏は、既に「〇BC書店」という「ビニール本屋」を開いていて、何店舗か展開していた。

 販路はあるので、子供の頃の「夢」を叶えるべく、ま〇が専門店を開くことになった。

 都会の真ん中である。店舗は、採算があまり取れていない、水商売(キ〇バレー)の店を根本的な改装をした。テナントビルで2階・中2階、3階を借りていた。

 オープンして間もなくの頃、ホステスが来て騒いだ事があった。

 どうやら、アフターフォローはしていなかったらしい。

 約4ヶ月の準備期間を経て、オープンした。集まったのは、部長、私の他に男子新入社員2人、女子バイト2人。

 半徹夜や風邪もあって、オープン初日は、3階で仮眠していた私は大幅に遅刻して出勤。

 店長である部長に散々詰られた。「起こしに行ったのに、起きなかった。」と、言われて。

 生理現象ではあっても、全面的に私に非があるので平謝りした。

 数ヶ月後、事件は発覚した。

 いつまで経っても給料が未払いのままなのである。社長は会長の義理の弟らしいが、経営者には向いていなかった。

 他の従業員にせっつかれ、私は店長に掛け合った。

 ところが、店長も未払いのまま働いていた。

 意を決した、私は会長に掛け合った。

 会長は大層驚き、私に頭を下げた。

 テレビで観る姿からは想像出来ない、いい人だった。

 後で考えたが、ホステスが泣きながら飛び込んで来たのは、連絡不行き届けだったかも知れない。

 結局、会長はビニール本屋の事務員に事務を兼任させることにし、全員に給料は支払われたが、従業員の不満は収まらず、男子社員の1人と、女子バイトは退職した。

 私も、帰阪した。実家を継ぐという名目で。

 後の時代で同じようなことが起こった。駆け出しプログラマの時代だ。

「世間知らず」は、経営者には向かないのだ。

 二度目は、DVDレンタル&書籍販売の本屋さんのお話。

「研修」と銘打つ、他の店での「修行」を経て、派遣された先は、キオスクぐらいの小さな店。

 店長は、その店と「本店」を行ったり来たり。言わば、留守番要員。

 色々あったが、「売り上げが合わない」と言われ、解雇になった。

 後でよく考えると、パートのおばちゃんが、後世に事件を起こした宗教団体の信者だった。

 店に、書籍コードの無い本が1冊あり、私は何度も「返品」の荷物に入れた。

 それが気に入らなくて、おばちゃんが「抜いて」いたのだと気づいた時は遅かった。

 おばちゃんに「変な本あるね」と、言えば良かったのかどうかは判らない。

 どちらも黒歴史だ。ただ、あの会長を恨んだことは一度もない。

『実るほど頭の下がる稲穂かな』、その言葉を聞く度、あの会長を思い出す。

 ―完―





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