匿名短文おバカ上司企画における本庄照擬態杯に関する一考察

阿下潮

序〜結論

 本考察は、匿名短文おバカ上司企画(以下「本企画」という。)における本庄照擬態杯に参加のいずれの作品が最も本庄照(以下「本家」という。)その人による作品であると思われるか、論証に基づき結論づけることを目的とする。

 前提として、カクヨム掲載の本企画概要にまとめられている本家の作品や本家の擬態方法などを根拠に用いるものとする。当然、本家はこれらにまとめられたこれまでの法則によらず作品を書くことが可能であり、意図的にそうすることで参加者を欺くことも可能であるが、本考察においてはこれらの可能性は考慮しないこととする。これは、いかに精緻に推論を重ねた場合にも、そこに我々の知らない情報が存在すること﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅または存在するかもしれないこと﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅を我々は察知﹅﹅﹅﹅﹅﹅することができない﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅からである。興味がある方は「後期クイーン問題」で検索されたい。

 また、本家は10月12日0時23分のツイートで「純度120%、完全なる本庄照を直球ストレートど真ん中で投げました! 我こそが本物の本庄照!(あたりまえ体操)

14作品も! 本当にありがとうございます! 対戦! よろしく! お願いします!!」

と記している。これは本家による、偽証の不存在宣言と捉えて問題ないだろう。


 本考察においては以下の各点から検証を進める。

1)傍点

2)提出順

3)キャラ名称

4)タイトル

5)段落区切り

6)ミステリ的意外性及び納得性

 複数の網をかけることで結論へフォーカスしていきたい。


1)傍点

 本家と言えば、何はなくとも傍点である。

 本家は10月5日19時44分に「擬態杯、全員が傍点を「﹅」で書いてくるかと思うと壮観ですねぇ」とツイートしている。自身も擬態杯に参加する前提ならば、この場合の「全員」には当然本家も含まれるはずである。

 本家はミステリを嗜む者であり、ミステリの者はフェアであることを何よりも重んじる。謎はロジカルに解けるようにできている。本家が全員傍点を「﹅」で書くと述べている以上、擬態杯参加の14作のうち、「﹅」以外の傍点を使っている「18」「23」、そもそも傍点を使っていない「13」は除外できる。


2)提出順

 次に、少々小狡い限定の仕方だが、「26」「27」も除外できる。作品は提出順に掲載されるというレギュレーションがあるため、この二作は最終に提出された二作であることが分かる。

 ここで思い出していただきたいのが、提出期限間近(10月11日22時47分)の主催者のツイートである。

「あと1作!!!!!あと1作ください!!!!!!!」と叫んでいるが、自然とこのツイートの意味を読み解けば、この時点での提出作品は23作であったと予想できる。

 仮にこの時、本家が作品未提出であった場合にはこの叫びには至らない。なぜなら、本家の作品が提出されることで24作揃うならば、わざわざ呼びかける必要がないからである。主催者がこのように作品提出を呼びかけている以上、この時点で本家の作品は提出済みであると考えられる。よって、「24」以降の擬態作品は本家ではないと言える。


3)キャラ名称

 本家は名前にもこだわりが強いとされているため、次はキャラのフリガナに注意してみよう。本家の直近の作品である『東京因習村大学』や『ゲーミング・プラネタリウム』において、初出のキャラの名前には必ずフリガナをふっていることが分かる。擬態作品の中でキャラにフリガナをふっていないのは、「11」と「20」「26」「27」でありこれらの作品は除外できる。


4)タイトル

 タイトルに関しては、「他の読み方がない」「エゴサできる」「略称が推測できる」をできるだけ守るようにしています、とのこと。エゴサできる点に着目すると、単純なタイトルや一般的な名詞だけのタイトルは、検索した場合に無駄なものがヒットしてしまうことから避けるはずである。このことから、一般的な言葉をタイトルにしている「22(パンドラの箱)」は除外。なお、一般的な名詞だけを使用していても、組み合わせが一般的でなければエゴサはできるため除外対象にはしない。


5)段落区切り

『本庄照の作者当てをしてみよう!』において、段落切り替え記号に関しては「*」「§」「◆」が多い、とある。一見、これらの記号の使用の有無を除外対象の指標にしたくなるが、実はこれはいわゆるレッドヘリングである。その直後に「できるだけ祭り(※)では1シーンで書くようにしてます。」と書かれており、これから目をそらすために置かれたいわば囮の情報なのである。(※ここで言う祭りとは書き出し祭りを指す)

 4000文字以内で書かれる書き出し祭りにおいて1シーンにするのならば、いわんや2000文字以内の擬態杯をや、である。というわけで、「*」「§」「◆」などの記号を使って、複数のシーンにまたがって描かれている「13」「14」「16」「20」「22」「23」を除外。


 さて。

 ここまでで残っているのは「02」「09」「12」「21」の4作品である。

 しかし、ここからさらに絞りきるための明確な境界条件が見つけられなかったため、最後は筆者(阿下潮。以下同じ。)の個人的な思い入れを基に発想を飛躍させることで結論まで持っていきたい。


6)ミステリ的意外性及び納得性

 本家にはミステリがよく似合う。たとえ2000文字以内という短文であってもミステリ的要素を盛り込んでくるものと思われる。では、ミステリ的要素とは何かと言えば、意外性と納得性である。ミステリに仕上げるためには、単にびっくりさせるだけでは足らず、その意外性に納得性が伴わなければならない。『ミステリの書き方講座』という作品を書くような本家が、ミステリとしての本質を疎かにするとは思えない。

 この観点から、残った4作品を検証していく。


02『3の倍数と3のつく日にバカになる上司』に関しては、最後の一言が物語のカタルシスを作り上げている。ここにタイトルからの伏線が効果的に働き、なるほど、と思わせるため、意外性と納得性を両立させている。翌月が三月であることを仄めかす伏線があれば、より良かったのではないかと感じられた。

09『窓際の番犬』に関しては、退職を決意した主人公が辞めずに残り、上司を昇進させようとするところに意外性がある。間違いのない人生を送ってきた主人公が、自ら間違いを選ぶ反転の構図がこの物語の強さである。そこに納得性を付与し得る情報量が若干薄いように感じられた。

12『成川研究室の芳しくない日常』に関しては、理系男子を小馬鹿にしているようで愛すべき存在として捉えている語り手の口調は微笑ましかった。ミステリ的要素(意外性と納得性)はあまり感じられず、冒頭で帆布のかばんを描写しているものの伏線としては弱く、また意外性の演出までには至っていないように感じられた。

21『敵機に帽子を振れ』に関しては、資料に裏打ちされた確かな描写が特筆に値する。敵機に対してなぜ帽子を振るのか、という謎と意外性のある理由が示されており、時代ミステリの範疇にある作品である。謎の提示から真相に至るまでがやや直線的なため、意外性と納得性の両立という観点からは若干弱いように感じられた。


 以上のことから、伏線を回収すると同時にミステリ的な意外性と納得感が最も得られるのは「02」であると考えられる。


結論:本庄本家の作品は02『3の倍数と3のつく日にバカになる上司』である。


 なお、本考察は本庄本家の作品を当てるために推論を展開したが、筆者自身の作品も区別せず推論の俎上に載せている。よって、筆者が本家以上に本庄作品に近似していた場合には、自作品を本庄本家の作品﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅として結論づけることも十分ありうる﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅ことを申し添える。

 すなわち、本考察の結論をもって筆者自身の作品を限定することはない。



謝辞

 本考察のもととなる企画を主催いただいた南雲 皋氏、擬態元となっていただいた本庄照氏、並びにこの拙い考察を最後までお読みいただいた奇特な読者の皆様(推定5人以下)に深謝の意を表します。

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