第23話 タイのクリスマスの不憫かわいい笑えるエピソード

タイのクリスマスの不憫かわいい笑えるエピソード

プロローグ:聖なる夜に舞い降りた江戸っ子

賑やかなバンコクの街も、12月ともなればクリスマスムード一色に染まる。きらびやかなイルミネーション、サンタの帽子をかぶったトゥクトゥク、寺院に飾られた巨大なクリスマスツリー…仏教国タイでも、クリスマスは一大イベントなのだ。

そんな中、スクンビット通りにある瑠奈のアパートでは、一風変わったクリスマスパーティーの準備が進められていた。瑠奈は、頭の中の戦国武将・山田長政、そして昭和からタイムスリップしてきた江戸っ子・亀次郎と共に、テーブルセッティングや料理の準備に追われていた。

「瑠奈ちゃんよぉ、クリスマスってのは一体何なんだい?」

亀次郎は、赤いサンタ帽を被りながらも、首を傾げていた。

「クリスマスはね、キリストの誕生日をお祝いする日なの。家族や友達と集まって、プレゼント交換したり、美味しいものを食べたりするのよ」

瑠奈は、慣れた手つきでローストチキンをオーブンに入れた。

「へぇ~、キリストって人の誕生日かい?そりゃあ、めでてえこってすなぁ!」

亀次郎は、目を輝かせながら言った。

『瑠奈よ、キリスト教は西洋の宗教じゃ。わしらの時代には…』

頭の中の山田長政が、説明を始めようとした。

「もう、長政はいいから!今日はクリスマスなんだから、細かいことは気にしないで楽しもうよ!」

瑠奈は、長政の言葉を遮って、笑顔で言った。

第一幕:七面鳥 vs. すき焼き

テーブルの上には、色とりどりの料理が並んでいた。瑠奈特製のローストチキン、ソムが持ち寄ったトムヤムクン、そして、亀次郎がどうしても作りたがった「特製江戸前すき焼き」…

「おいおい、瑠奈ちゃん、クリスマスってのは、七面鳥を食う日じゃねえのかい?」

亀次郎は、鍋をつつきながら、不満げに言った。

「亀次郎さん、タイは七面鳥があまり一般的じゃないのよ。それに、クリスマスだからって、七面鳥を食べなきゃいけないってわけじゃないわ」

瑠奈は、笑顔で説明した。

「へぇ~、そうなのかい?でもよぉ、クリスマスに鍋ってのは、ちょっと風情がねえなぁ…」

亀次郎は、ぶつぶつと言いながら、すき焼きの肉を口に運んだ。

『瑠奈よ、亀次郎の言うことも一理ある。クリスマスには、特別な料理を…』

山田長政も、亀次郎に同調し始めた。

「もう、二人とも!せっかく美味しい料理が揃ってるんだから、文句言わないで食べようよ!」

瑠奈は、呆れ顔で言った。

第二幕:プレゼント交換で大混乱

食事が終わると、いよいよプレゼント交換の時間だ。瑠奈は、タワンに手編みのマフラーをプレゼントしようと、ドキドキしながら赤い包装紙の箱を握りしめていた。

「瑠奈ちゃん、これ、俺からのプレゼントだぜ!」

亀次郎は、大きな風呂敷包みを瑠奈に差し出した。

「わぁ、亀次郎さん、ありがとうございます!」

瑠奈は、嬉しそうに風呂敷包みを開けた。中には…

「え…? なんで…? ダシ昆布…?」

瑠奈は、目を丸くした。

「へへっ、瑠奈ちゃん、これさえあれば、どんな料理も美味しくなるってもんよ!」

亀次郎は、得意げに言った。

『瑠奈よ、亀次郎の気持ちは嬉しいが、プレゼントとしては…』

山田長政が、言葉を濁した。

「亀次郎さん、ありがとうございます… でも、私、昆布アレルギーなんです…」

瑠奈は、申し訳なさそうに言った。

「げぇっ…! な、なんだと…!? 昆布アレルギー…?」

亀次郎は、ショックで固まってしまった。

第三幕:サンタクロースは不憫かわいい?

プレゼント交換も終わり、パーティーも終盤に差し掛かった頃、ドアのチャイムが鳴った。

「はーい!」

瑠奈がドアを開けると…

「ホーホーホー!メリークリスマス!」

そこには、サンタクロースの格好をした…ソムが立っていた。

「ソム!?」

瑠奈は、驚きのあまり、言葉を失った。

「サプライズ! 瑠奈のために、サンタになってきたわよ!」

ソムは、満面の笑みで言った。しかし、よく見ると…

「ソム、そのヒゲ… ちょっとズレてるわよ…」

瑠奈は、苦笑しながら指摘した。

「え? マジ!? やばっ!」

ソムは、慌ててヒゲを直そうとした。しかし…

「あっ!」

ソムのヒゲが… 剥がれてしまった!

「あはははは!」

瑠奈と亀次郎は大爆笑した。

『瑠奈よ、ソムの気持ちは嬉しいが…』

山田長政も、思わず苦笑してしまった。

エピローグ:忘れられないタイのクリスマス

こうして、瑠奈、亀次郎、ソム、そして頭の中の山田長政による、ちょっと変わったタイのクリスマスパーティーは、幕を閉じた。

「来年は、もっと完璧なクリスマスパーティーを開こうね!」

ソムは、リベンジを誓った。

「ああ、そうだな! 来年は、七面鳥も用意するぜ!」

亀次郎も、やる気満々だ。

『瑠奈よ、来年は、わしもクリスマスについてもっと勉強しておこう…』

山田長政も、心の中で呟いた。

瑠奈は、笑顔で二人を見つめていた。

「うん! 来年も、みんなで一緒にクリスマスを祝おうね!」

こうして、瑠奈の心には、忘れられないタイのクリスマスの思い出が、刻まれたのだった。

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サムライ女子はつらいよバンコク:Z世代女子大生の異世界転生物語 中村卍天水 @lunashade

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