オンミサマ

 あの時俺が見たのは回覧板なんてものじゃなかった。Yは俺の家の前で、オンミサマを持っていた。祖母の家に届けている途中で、俺は学校から帰っている途中、Yと出会して「それ何?」と聞いた。俺はYにそれを貰った。見ちゃ駄目だぞって言われていた。でも俺は見た。祖母が帰って来る前に、俺はオンミサマを見た。神崎由美子。俺はもう一つの人格であるこの女の事を知っていた。俺はその日に少年を犯した。もう一つの人格であり、仮面。「私」というものを補完し、拡張し続ける、もう一つの「私」。

 神崎由美子。

 それが俺のもう一つの名だ。

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替わり子 石原瑞稀 @ishihara_0324

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