第23話

「‥‥‥ヘンな気起こしたら、たたき出すから」




渋々言う瑠羽の声が、心臓の近くで恨みがましく響く。






棘の森の道は開かれたけど。




不本意な起こされ方をした眠り姫は、王子を威嚇して再び不貞寝‥‥‥‥か。




こうなったら、王子が取るべき道は1つ。




「うん、わかってる。‥‥‥棘の森で一緒に寝よ?」




俺は、そう答えて、瑠羽の気持ちを宥めるように、彼女の艶やかな髪を撫でた。




「何?‥‥‥棘の森って?」




上体を起こし、俺の顔を覗き込んで、訝しそうにそう問いかけてきた瑠羽に、説明しようかどうか一瞬戸惑ったけれど‥‥。




「ううん、なんでもない」




俺はゴロリと寝返りを打って、瑠羽の正面から身体を背けた。




なんとなく、変な妄想するな!とか文句を言われそうだし。




折角の二人きりの夜に、お姫さまのご機嫌をそこなうなんて勿体無いから。





それは、あえて教えない方向で。








【完】

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棘の森の瑠羽 (守り姫~もりひめ~番外編①) 麻綾 @m-aya

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