第22話

「いっそ、泊めてよ。外泊許可なら、取ってあるから」



「えっ!」 



「瑠羽と一緒に過ごすかも、って、母さんに言ったら、喜んで申請してくれた」



「うぇぇっ!?」



ベッドの前で仁王立ちをしている瑠羽は、両手でコメカミをがっしりと抱えて、可愛げのない悲鳴を上げた。




勝手な事して瑠羽には悪かったけど。




マジで、うちの母さん、ノリノリだったし。



今度こそ、瑠羽から婚約のOKを取って来い!ぐらいの勢いだったし。



これで、仕方なく寮に帰ったなんて知れたら、不甲斐ない、って、嘆かれちゃう可能性大だから。



お願い、俺を追い出さないで。





「‥‥や、やだっ、うそっ、何でそんな、勝手にっ!‥‥‥どうしよう、私、どんな顔して朋紀のお母さんに会えばいいの?」



自称常識人の瑠羽は、守り役としての立場とか、成人としての責任とか、そういう事を気にしてオロオロしているんだろう。



その、青ざめた瑠羽の様子を見ると、さすがに良心が咎めるけれど、




「俺の婚約者の顔して、会えばいいんだよ」




俺は、ベッドに横たわったまま腕を伸ばし、立ちはだかっている瑠羽のコートのベルトの端を引いて、その結び目を解いた。




慌てて俺の手を払おうとした瑠羽の右手を捉えて、そのまま瑠羽を引き寄せると、瑠羽は、あっさりと俺の上に倒れこんできて。




その柔かくて暖かい上体を抱きかかえると、ほどなくして瑠羽は、強張る身体の力を解いて俺の胸の上に頬を預けた。




敵うはずなのに、抗わない。




でも、




奪おうとすれば、許そうとしない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る