第19話

『相棒!大丈夫か!?』


カジキが暴走し始めてから数分経った後、突然ロゼがその場に倒れた。

ゼロがすぐさま状態を確認しようとするがロゼが近づいたゼロのことを掴んだことでこの状況の不味さを理解する。


『相棒、まさかせ』


そこまで思念を飛ばしたゼロだったがロゼにぶん投げられたため言葉が途切れる。


「くるわけないだろ。侵略のための穴が空いたから少し酔っただけだ。」

『相棒には直接その感覚が来るからな〜。俺は特にないんだが』

「今すぐにでも押しつけてやろうか?あぁ??」


少しキレながらロゼが穴の場所を確認し、どのくらいの脅威度の場所なのかを確認する。

ロゼ達が向こうの世界を穴からのぞいていると、


「私の世界になんか用?」


穴から160cmほどの黒髪の女性が現れる。

そして、ロゼたちのいる場所に足をつけた瞬間


「あっ、れ…?」


女性がその場に倒れ定期的に痙攣をしてしまう。


「管理者がこっちに来るなんてな」

『相棒、この神は力の差もわからないバカらしいぜ。それに向こうの世界では“感知”を司ってるみたいだぜ。自分の危険を感知できないってのは笑っちまうな!』


痙攣している女性(向こうの世界の管理者)は自分の力を使い、無理やりこの空間にある概念を上書きしようとするが


「何、こ…れ」


二つの権能がこの空間を支配しており、逆に自分のことを無に返そうとしているのかどこかの箱のような場所に自分の力が吸われていく。

ロゼは管理者を地面から離れさせると同時に今いる教会から一番離れた場所に転移する。


「管理者さん?だめだよここを上書きしようとするなんて……少し遅かったか」

『アイツの近くだったから余計に最悪だったな、気絶しちまってる。とはいえ、ここはアイツの概念がの概念よりも弱くなってるから少ししたら起きるだろ』

「そう考えて動いた結果何人の神がこっちに吸われたんだ。はっきり言って俺たちのことを忘れさせてとっとと向こうに放り投げるぞ」

『それもそうか。こっちの世界の神に生まれ変わられても困るからな』


ロゼは管理者を空中に固定させて大量の魔法陣を展開する。

大量の魔法陣が輝き始めると魔法陣が一つに纏まり、一つの鎌が出てくる。

ロゼはその鎌を左手で持ち、右手にゼロを持つと二つの鎌で管理者のことを切る。

切られた管理者の傷口から黒い光が少し出ると空間に溶けていき何もなかったかのように管理者の傷も塞がる。


「はぁ、とりあえず処置はできたけど相棒任せていいか?」

「了解。じゃあ向こうの戦力ちょっと削ってくるわ」


ゼロは鎌から人型(幼女形態)になると、管理者を担いで向こうの世界に消えていくのだった。


———•••———


ゼロが異世界に足をつけた瞬間


「危ないなー」


 首元に剣が突きつけられる。

 管理者を背負っているし、剣が一応あるため見回すことはできないが鎧を着た兵士たちに囲まれているのだろう。

 それにしたってどうやって気付いたんだか。


「お前は何者だ?」


 剣を突きつけてくる兵士が聞いてくるが答える理由がないので無視をする。


(うーん、この世界思ったより文明が進んでるけど考えが進んでない感じか?

 銃を持っている人は感じられるが剣を持っている人の割合が多いな。

 いや、機械兵が何体かいるか。それは面倒くさいな。

 でも、最低限だけでいいかな?)


「おい、とっとと答え…!」


 俺の気配の変化を感じ取ったのか兵士が俺から離れて銃を持った兵が俺のことを撃ってくる。

 だが、撃った弾丸は俺にたどり着く前に空気に溶けて消える。


「なに!?」


兵士たちが陣形を組んで俺の方を見てくるが、そういえば管理者背負ったままだったな。

 普通は取り返しに来たりすることが多いがもしかして認識できてないのか?それとも知らないだけか。

 まあ、面倒だし早く帰りたいからこいつはこの世界の管理者が生まれた場所にでも投げときゃいいか。


「◻︎」

「何かくるぞ!気をつけろよ!」


 兵が何か言っているが俺の目的はお前達じゃないんだよな。

 兵士たちが俺の動きに注目しているが兵士達はいまだに後ろで起きていることに気づけていないらしい。

 まあ、機会は喋らないもんな…普通。


「それじゃ、終わったから。ポーい」

「何が」


 俺はこの世界にいる7割の機械兵を破壊し終えたので管理者をとりあえず生まれた場所に投げた。

 

「それじゃ、バイバ〜イ」

「逃すか!」

「いや、まて!」


1人の兵士が俺に突っ込んでくるが


「………侵略してもいいんだぞ?」


 首を後ろに180°曲げて兵士を見ながら言うと兵士は君が悪いものでも見るかのようにその場に尻餅をついてしまう。

 それにしてもこの世界は一回も侵略されたことがないんだな。

 管理者がポンコツでもそこら辺はしっかりとやっているのは感心できる。


「ば、バケモノ」

「バケモノよりも酷いのが俺だけどな」


 首を元に戻しながらこの世界の記憶を見ていく。


(体の中に生物を寄生させその後成長した寄生生物が宿主を中から喰らいながら出てくるか。

 その、寄生生物魔力で成長する。そして、火に弱い。それに詳しくはわかっていないため見つけ次第殺処分対象。その結果、現在は1匹しか生きていないか。

 この程度なら無視してもいいか?)


 少し無視してはだめなようなものがあったが、軍事運用は計画段階にあったが絶滅するため亡くなったから、問題はないと思いたい。

 困ったらロゼに頼めばいいか。

 それに、残り一匹ならこっちの世界に来ることはないだろ。

 そして、俺は異世界からロゼのいる場所に帰るのだった。

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悪が正義に負ける理由 神影 @mikage0529

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