小さい彼女は甘えたい

 いつも通りに授業を受けて、そして待ちに待った下校の時間だ。

この時間が一番モチベーションが上がる。

だって……。


「おーい美羽」


「――――! 拓真!」


「お待たせ、帰ろっか」


「うん!」


 理由は簡単、美羽と2人きりになれるから!

ちょっと前までは、ずっと1人で寂しく下校していた。

でも、彼女が出来てからは、ただの下校でも毎日楽しいと感じるようになった。


「今日は来ても良いんだよね? 拓真の家!」


「おう! ちゃんと許可取ったから出入り自由だ!」


「やったー! しばらく行けてなかったから、すごい楽しみにしてたの!」


 美羽、めっちゃ嬉しそうだな。

俺の家に遊びに行けることが決まったら、いつもこうやって子供みたいに喜ぶ。

可愛すぎかよ……!

 そんな感じで、ルンルンになりながら歩く美羽と一緒に、俺達は教室を出て玄関へと向かう。


「おっ、三上さんじゃん」


「マジ可愛いよな〜。彼女にしてぇ!」


「もう諦めろ。三上さんにはもう彼氏がいるらしいからな。ほら、隣にいるあいつだよ」


「あー、あいつか。噂には聞いてたけど、まじで彼氏いたんだな。てか、どうやって、あの三上さんを落としたんだ?」


「な、気になるよなぁ……」


 通りすがりに、男子2人組の会話が聞こえた。

美羽の名前が出ていることから、どうやら俺達の事を話しているようだった。

 正直、学校で男子から人気のある美羽の彼氏になった俺が、周りからどう見られているのか、最初は怖かった。

よくある話、学校の美人女子高生と付き合った瞬間、他の男子から嫉妬の目が向けられるっていうやつ。

 それが一番の不安だった。

俺が原因で、美羽に迷惑がかかってしまう。

それどころか、俺と美羽の仲が悪化することもあるかもしれないと考えることもあった。

 しかし、実際は……。


『どうやって三上さんを落としたんだ……?』


 という疑問がほとんどで、もはや嫉妬という言葉すら浮かんでこないほどだった。

俺の心配は、全くと言って良いほど意味がなかった。

 どうやって美羽を落とした、か……。

何かマジシャン的なことでもしたのか、と予測を立てる人もいるみたいだけど、実際はめっちゃ単純。

美羽から告白してきて、俺も美羽のことが好きだったから、晴れて恋人になった。

な、単純だろ?


「――――えっとぉ、わたしの顔に何か付いてる?」


「あ、ごめん。つい美羽の顔を見つめちゃったよ」


「もう! そういうのは2人きりの時にしてよね……」


 うっ!!!

その照れた顔、最高ですっ!


「2人きりなら良いんだ?」


「それはそうだよ拓真。だって、そうでしょ?」


 ちらっと俺の方を見る美羽。

その顔はずるいぞ。

よし、家に帰ったらもっとその顔を拝むことにしよう。








◇◇◇







 美羽と一緒に学校を出て、それから20分後、自宅の前まで来た。


「お邪魔しまーす!」


「どうぞ〜」


 ついに来たぞ!

美羽が、俺の家に来たぞ!

これで完全に2人きりになれた。

ということは……?!

 とその前に、まずは俺の部屋まで移動だ。

俺の家は2階建てで、2階に俺の部屋がある。

ちなみに、両親は只今絶賛お仕事中。

だから、何しても問題はない!

まあ、ちゃんと節度は守るけど。


「荷物、適当において良いからな」


「うん、ありがとう!」


 美羽と俺は部屋に入り、荷物を置いた。

今の俺達は身軽だ。

ということは……。


「――――拓真!」


「うおっ! なんだよ、堪えれられなくなったのか?」


「それはもちろんだよ! だって学校でこんな事できないもん……。だから、ずっと我慢してた分! ねえ、なでなでして?」


「はいよ。よしよし……」


「ん〜! 拓真によしよしされるの好き〜!」


 いきなり俺にダイブしてきて、そしてギュッと抱きしめてくる美羽。

これだよ……これが美羽が一番可愛いって思う瞬間!

 美羽は、実はかなりの甘えん坊さんタイプで、2人きりになればすぐにこうなる。

常にスキンシップを要求してきては、こうやって俺に寄ってくる。

なんだろう、ちょっと猫っぽいというか小動物感もあるのかな。

だから、余計に愛嬌が増して可愛い。

試しに頭の中で、美羽の頭に猫耳付けてみたり、でっかいヒマワリの種を手に持って食べてる様子を思い浮かべてみたけど――――やばっ、全部似合う。


「ねえ拓真。今日ね、何故かとある男子に告白されたんだよ?」


「げっ! ま、また告白されたのか!? でも、俺達の関係って結構広まってる気がするんだけど……」


「んね、わたしもそう思ってるんだけど……。さん付けされたし、見たこともない顔だったから、多分後輩なのかな? もちろん、きっぱりと断ったけどね」


「まあ、美羽に告白したくなる気持ちは分からなくは無いな。だって、美羽美人だし」


「え、えっとぉ……。あ、ありがとう。えへへ、拓真に言われると恥ずかしい」


 ずっきゅうううん!!!!!

何その困り顔からの恥ずかし顔!

いや彼氏だから何回も見てるけどさ、反則だろ!

あ、やばい……。

俺まで顔が熱くなってきた。


「な、何で拓真まで顔赤くなってるの?」


「――――いやだって、その美羽の表情……。どう考えても反則」


「は、反則……?」


「反則だよ! 可愛すぎるだろうがぁ!」


 とか言いながら、がっつり美羽に抱きついてしまった。

ああ、俺の理性はどこに行ってしまったのか……。

でも、そんな事考えてる余裕がないくらいに可愛いんです!。

 俺に抱きしめられた美羽は、ちょっと困惑気味になりながらも、しっかりと俺のことを抱きしめてくれた。

そして、お互いに顔を見つめ合って……。


「「――――」」


 ゆっくりとキスをした。

まだちょっとぎこちないけど、そういうところも俺達らしいなと感じる。

だって、お互いに初恋で初めて出来た恋人なのだから。


「――――拓真、わたし……拓真の彼女になれて嬉しい。わたしにとって拓真は、わたしに『恋』というものを教えてくれたから。だから、これからもよろしくね」


「ああ、俺もよろしく。ずっと憧れで、みんなのアイドル的存在の美羽の彼氏になれるなんて夢にも思ってなかったから……。これからもずっと美羽の傍にいるよ。大好きだ、美羽!」


「うん! わたしも大好き、拓真!」

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俺の彼女は小さいけど超可愛い うまチャン @issu18

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