俺の彼女は小さいけど超可愛い

うまチャン

小さい彼女

「礼」


「「「「「ありがとうございました!」」」」」


 はあ〜、やっと昼休みだ。

今日はやけに時間の進みが遅い気がする……。

 こういう日は、いつも以上に鬱になる。

そもそも勉強はそこまで好きじゃないし、眠たいし、なんなら寝てるし。

真面目に受けないと意味がないのは分かっているんだけどな。

評価・評定にも繋がってくるし。

それでも、体が言うことを聞いてくれないのは、いつも通りのことだ。

 楽しい昼休みが始まったぞ、野口のぐち 拓真たくま

これからワイワイ盛り上がるはずの時間が訪れたんだぞ!

目を覚ませ!


「――――」


 ダメだ、やっぱり体が『やだやだ! 俺は怠惰を貫くんだ!』って訴えてくる、気がする。

なーんて、そんなことを思っていたら、一瞬でそれが吹き飛んだ。


「たーくま!」


 元気の良い声で、俺のもとに真っ先に来た女子高生。

ああ、何度見ても可愛いな〜。


「おう、美羽」


「あ、また寝てたでしょ。全く、寝ちゃダメだよ?」


「はい、すいません! 次から気をつけます!」


「うん、それでよし! じゃ、一緒にお昼ご飯食べよ!」


「おう!」


 俺が席から立ち上がると、美羽の顔の位置が一気に低くなった。

そう、彼女は身長がめちゃくちゃ小さい。

150cmどころか、140cmギリギリの140.2cm。

 しかし、顔は整っていて、学校内ではかなりの人気者で、誰にも負けないくらいに元気いっぱいだ。

学校内の男子たち、学年関係なくチャンスを狙っている人は多い。

俺だってその一人……だった。


「てか美羽さ」


「ん?」


「俺の教室でさ、しかもこんなに堂々と俺の机で弁当食べてて良いのか?」


「えっ、なんで?」


「なんでって……」


「もしかして、恥ずかしいのかな〜?」


「――――」


 見透かされてしまった。

でも、本当に大丈夫なのかと心配になってしまう。

だって見てほら、すっごい痛々しい視線が俺に注がれまくってる。

美羽を狙っている男たちの、嫉妬心丸見えの視線が……。


「あっははは……! 拓真ったら可愛いんだから〜」


「か、可愛いって……。なんか嫌だなぁ」


「拓真は可愛いもーん」


 いや、それを言っちゃったら、美羽の方が比べ物にならないくらいに可愛いということになりますけど。


「別にわたしは気にしてないよ。だって……わたしは拓真の彼女なんだから!」


「――――! 嬉しいこと言ってくれるじゃないか」


 びっくりだよなぁ。

こーんなにちっちゃくて可愛い、しかも学校で人気ランキング上位に数えられている美少女がさ、俺みたいなやつの彼女なんて。

 きっかけは、ごく単純なもの。

俺も美羽のファンだったこともあり、影ながら好意を寄せていたから。

まあ男だったら分かると思うけど、可愛い女子とイチャコラしたいという欲望、ただそれだけだ。

魔法のように誰とでも打ち明けられ、いつも美羽の周りには人が集まってくる美羽の姿は、俺にとっては輝いて見えた。

 ちなみに、俺は特に目立つ感じでもないし、友達と普通に話したり遊んだりしてる。

よくある陰キャって訳でもない、と思う。

まあ悪い所をいえば、面倒臭がりって所か。

あっ、あと頭が悪いことかな!


「――――どうした?」


「いやぁ〜、いつ見ても拓真はカッコイイなって思って。そしたら……見惚れちゃってた」


「えっ、そっ、そうか……」


「あ、照れてる〜」


「べ、別に照れてない……」


「ん〜?」


 くっ、見透かされてしまってる!

美羽には叶わないってか……。

いや叶うわけが無い。

こんなうっとりとした表情を見せられたら、たまらないに決まってる。

 でも、なんで学校で超人気な美羽が、俺の彼女になったのか?

実はこれもすごい単純な話で、美羽自信も俺に好意を寄せていたらしい。

そう、いわゆる両思いってやつだ。

 マジで凄いと思う。

俺って運良すぎなんじゃね?

逆にそれのせいで、明日死ぬとかないよな……って思ったくらいだ。

そして、今は俺の目の前で


「美羽って……まじで可愛いよな」


「えっ!? ちょ、急に恥ずかしいこと言わないで!」


「あ、ごめん! つい本音が漏れちまったよ」


「う、嬉しいけど、それは2人きりの時にして欲しい……」


「じゃあ、今日の放課後帰る時にめっちゃ言うことにしよう」


「え、えっとぉ……。お手柔らかにお願いします……」


 ここは普通なら、『やっぱり恥ずかしいから無しで!』って言うところだと思うけど、なんだかんだ言って欲しいから否定しないところが、美羽の可愛らしいところだ。

だから、つい本音で可愛いとか言っちゃうんだよなぁ。

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