14.

「私よりもそう呼ばれるのがふさわしいお方がいらっしゃるでしょう。ですから、姫宮様の頼みでも聞き入れないのです」

「あ⋯⋯そうですよね。すみません⋯⋯」

「いえ。では、先ほどの違和感がなくなるまで姫宮『さん』と呼びましょう」

「はい。お気遣いありがとうございます」


ぎこちなくなくなってきた姫宮の笑う顔をずっと見ていたい欲をどうにか抑えつつ、「食べてしまいましょう」と促した。


姫宮の食べるスピードにほぼ合わせて食べ終わった後、「この後見に行きたい所があるんです」と申し訳なさそうに言ってきた。

その場所に一緒に行ってみると、大河が好きなハニワのグッズなどが売られている雑貨屋だった。


「また選ぶのが遅くなってしまうかもしれないのですけど⋯⋯」

「いいえ、それこそゆっくりと選ぶものですよ。大河様のために選んできてください。私はいつでも待ってますから」

「⋯⋯はい」


はにかんで見せた姫宮はそろそろとハニワグッズ売り場に赴いた。

色々な物に目移りさせている後ろ姿に、息子のことが本当に大切で仲良くしたいんだなというのが伝わり、微笑ましい気持ちになる。


時間かけて選んだ物に「これはどうでしょう」と自信なさげに訊いてくるものだから、「いいのではないでしょうか。確か持ってませんでしたし、持っていたとしても姫宮さんが買ってきてくれた物ですから、きっと喜ばれますよ」と歓声を上げ、奮い立たせた。


帰り道、その買った物を自分の物よりも大切に抱え、時々大河のことを思い浮かべているのか、優しげに見つめる姫宮の横顔をそっと見ていた江藤は思った。


寝る時、寂しくならないように、そして"姉"として、実の子と仲良くなれるために姫宮を支えて、見守っていこうと心の中で誓うのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

内緒のオメガの見守り 兎森うさ子 @usagimori_usako

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ