第2柱 死
「私は神が嫌いだ!」
そう唐突に叫んだ........
いや、唐突ではないこれには理由がある。
*
末期がんと宣告された光は、とても暗い顔でしばらく何も考えられなかった。
それは、光の母親も同様であった、いや母親の方は違っていた。
「光が…ひかりが…まっ、末期がん?」
「そんなのあり得ない!あっちゃだめなの!先生もしかして冗談を言っているのではありませんか?」
「いえ、決してそのようなことは.....」
先生はとても困った顔をしていた。
「とぼけないで!冗談を言っていたんでしょう?ねぇ、先生!!」
「お母さん!やめて!」
「なに?光どうかしたの?」
「先生困っているじゃない!私だって信じたくないけどそれが事実なんでしょ!」
「はぁ?光までそんな冗談に付き合ってるの?ふざけないでよ!こっちは真剣なのに!」
「何がふざけてるの?お母さんこそふざけないでよ.....」
「あ、は.はは...ははは....はははははははは」
「光がおかしくなっちゃったわ」
「おかしいのはそっちだよ」
「パシッ!」
「え.......!」
頬がかすかに赤くなり、同時に痛みが出てきた。
「光.....違うの.....違うの....違う..違う......違う!」
そう言って、お母さんは病室を出ていってしまった。
お母さんにぶたれた.....えっ、あの優しくて絶対に誰かに暴力なんてしない、ましてや私にだって..
信じられない、信じたくない!
お母さんがあんなことをするなんて!
この日は末期がんと告げられて、残りの命は長くないと言われたことよりも、
お母さんにぶたれたことのほうがショックだった。
____________________
末期がんと告げられ、あの日以降入院することになった光。
そして、あの日以降、光の母親は病室に来なくなった。
聞いた話によると、お母さんは私が末期がんだと聞いて、病んでしまい酒に入り浸っているらしい....。
「お母さん.....寂しいよ.....」
お見舞いに行くと言った友達もいたが、母親がおかしくなっていることを聞いて、その子の親に止められてしまった。
祖父と祖母は3年前に亡くなっていて、片親である私は友達もお母さんも来ないとなると孤独になってしまった。
「私が末期がんなんてならなければ....ならなければ!!」
私はとにかく泣いた。
四六時中ではないけど、事あるごとに泣いた。
それは、もう長く生きられないという悲しみもあってのことだけど、孤独であることの悲しみによってのことが大きかった。
こうなったのは誰のせいなの?
私のせい?私のせいなのかな?
いや、違う、違う!私のせいじゃない!
こうなったのはすべて神様が悪いんだ!!
この世界を創造した、そして私という人生を作った神様が悪いんだ!
*
「私は神が嫌いだ!」
神に様をつけるのも反吐が出る。
私は思う。
私の名前は星ノ宮 光だが、それはこうなることを悟っていたのかもしれない。
星という字は死を連想させるらしい。
光という字は燃え尽きるという意味があるらしい。
今の私にぴったりじゃないか!
______________________
あの日から一ヶ月たった。
私はもう死ぬ。
それはなんとなくわかった。
私はその日の夜病院を出た、それは猫が死期を悟ると飼い主から姿を消すように。
体力なんてほとんどないが、そのときはなぜか身体が動いた、それは多分中治り現象であろう。
なぜそこに行ったのかはわからないが、気がつくと私は神社の前にいた。
もしかしたら、憎い神に報復しようとしたのかもしれない、それは昔お母さんと行った思い出のある神社だったからかもしれない。
「お母さん........」
自分の口から出た言葉に驚いた。
てっきり、「神は嫌いだ」とでもいうかと思っていた。
だが、やはりそうなんだ。
結局、神が嫌い、もう死んでしまうということが悲しいのではない。
「お母さん.....寂しいよ.....一人にしないでよ..」
一人でいる、そう孤独であることが寂しいんだ!
この日の夜は泣いた、でももう死んでしまうこともあってか、わんわん泣くわけでもなく、しくしくと一人寂しく泣いた。
鳴き声はだんだんと弱々しくなっていき、そして
死んだ。
そう私は死んだ....
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第2柱、ご清覧ありがとう御座います。
この柱では、一人になることの寂しさを伝えたくて書きました。
最近は、一人暮らしをする人が増えているようです。
皆さんは、ご家族に時々顔を見せていますか?
もしそうでないなら、ぜひ顔を見せてあげてください。
きっと喜ばれますし、自分自身も心が温まることでしょう。
では、次回の柱もお楽しみに。
次の更新予定
毎週 日・土 23:00 予定は変更される可能性があります
神嫌いの神様と一週間 みずみずしい水 @delphina
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