第14話 トラップ

 シーパに言ってゴブリンの通る道を通ってゴブリンの巣からしばらく歩いた森。ここにトラップをつくる。

「トラップってなに?」

「いいからそこの木のところに運んでくれ。」

「はい…」シーパは不思議そうに俺を木の根元に置く。

 俺はラップを出し、木と木の間に巻く。古きラップドッキリの方式だ。

「これでゴブリンが来れば、ラップ君にぐるぐる巻きにされちゃうってこと?うまくいくかな?」

「ゴブリンは目がよくないんだろ。木漏れ日で透明なラップが見えにくくなってるし、いけるんじゃないか?これなら安全に倒せるだろ。」

「えー大丈夫?」

「とりあえず試すから、静かにしてろ。耳がいいんだろ。ゴブリンは。」


「まだーー?ラップ君。」

「知らねえよ。ゴブリンに聞いてくれ。」

「15体倒さないといけないんだよ。8体じゃないよ。15体だよ。」

「シーパは8体って言ってたじゃねえか。」

「何言ってるの?5体が3枚で15体だよ。やっぱり学がないね。ラップ君。」

「だから、その学がないって言うのやめろよ。どっちもどっちだろ。」

「しっ。ラップ君。なにか来た。」シーパは声を潜め、草陰に隠れた。


 タッタッタッ

 足音が聞こえる。1体ではない複数体の足音に耳をすませる。1体を拘束しても、拘束されていない3体がいたら、シーパを危険にさらすことになる。足音の癖がよめてきた。短い足音が1つ、片足だけ大きい足音が1つ、どちらでもない足音が1つ。

 俺は木に巻いたラップの感覚に神経を集中させる。

「今だ!!!」

 1体が引っかかり、態勢を崩し、それにぶつかったもう1体。2体をまとめてラップでくるくる巻く。

「シーパ!!」そう叫んだ時には陰から剣を刺し、最後の1体を倒していた。


「ラップ君。うまくいったねー。」そう言いながら、俺が拘束したゴブリン2体にとどめを刺し、討伐証明となる右耳を切り落としていた。

「そうだな。」笑顔の彼女を見て言う。

「すごいね。ラップ君のトラップ。それで、これどうする?死体。ここにあったら警戒しちゃうよね。ゴブリン。」

「そうだな。置いておくと何かあったと思うかもな。穴を掘ると…大変だし、ラップで巻いておくか。」俺は、ラップでゴブリンたちの死体をミイラのように包む。

「ラップ君のラップってものをそのままにしておけるの?」

「そのままにしておける?」

「ギルドに耳を出したときも血がそのまま出てたし、この死体も匂いとか血を中で保存してるって感じだし。」

「そういうものだしな。ラップって。」

「ふーん」

 ゴブリンの死体を木の上に隠し、もう一度罠を張る。


 今度は4体。


 次も4体。


 次は3体。


 最後に5体罠にかかった。


 順調というより面白いように罠にかかったゴブリンたちを倒すにつれ、俺とシーパの連携は熟達し、何も言わずともゴブリンの群れを倒せるようになっていた。


「いやー大量だねー。19体だよ。すごいね。ラップ君のトラップ。」

 日も暮れ、シーパはリュックに倒したゴブリンの耳を入れる。

「そうだな。うまくいってよかった。」なによりシーパが怪我をせずにいれたのがよかった。

「もう、帰らなきゃ。」そう言って俺を持ち上げ、リュックに詰め込もうとする。

「えっ?俺、このリュックに入れられるの?」19個のゴブリンの耳が入れられ、ぱんぱんになっているリュックを見る。

「うん。ラップ君のためにつくってくれたリュックだから。ラップ君入れないと。」

「じゃあ、これ出して。ゴブリンの耳のためのリュックじゃないんだから。」

「リュックに入れないと運べないじゃん。」

「じゃあ、俺を持って運んでよ。」

「ラップ君は欲しがりだなー」シーパは俺を抱え、今回だけだよ。と言いながら歩き始める。


「この感じでゴブリン狩れたらさ、すぐ魔法鑑定できるかな?」

「そうかもな。魔法鑑定するのにいくらかかるんだ?」

「えーっと確か30シルバーだから、3000カッパ―かな?」

「ごめん、貨幣を知らないのに普通に聞いてしまったらそうなるよな。まず、貨幣の種類を教えてくれ。」

「銅貨と銀貨と金貨があって、カッパ―、シルバー、ゴールドって言うんだよ。1カッパ―が100シルバーでゴールドも多分そんな感じだけど見たことないから分かんないや。」

「そうなのか。宿の金額はいくらなんだ?」

「おばちゃんが安くしてくれて200カッパ―。ほんとは500カッパ―らしいけどね。昨日の報酬が500カッパ―だったんだけど、カトーちゃんに半分渡したから、ぎりぎりだね。」

「で、魔法鑑定が3000カッパ―か。」

「そう。いくらになるんだろうね。これ。昨日の3倍だから、800カッパ―かな?」

「だから、500掛ける3だから、1500だろ。わざとやってる?掛けると足す間違えたとしても503だし…」

「503じゃないよ。ラップ君。1500だよ。ちゃんと計算しないと、指貸してあげるから。」

「なんで、俺が間違えたみたいになってるんだよ。シーパこそ指足りないんじゃないか?」

「うるさい。リュック入れるよ。」


 そんなことをシーパと言い合いながら、門を通り町に入り、ギルドでゴブリンの耳を納品した。

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転生?したらラップでした。 患者ンケジャン @ganjang_gejang

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