友達から恋人へ

 学生時代、僕こと福田潤には好きな人、飯山奈央がいた。

その好きな人と常に、僕は一緒に行動を共にしていた。

授業中や休み時間、昼休み、下校時。

仲良くなった最初の頃は、昼休みや休み時間を一緒に話して過ごしていたが、徐々に帰るときも一緒になったり、席が近くなり授業のグループワークも一緒にしたりするようになり、ほぼ一緒に過ごすようになった。

 だから彼女とは仲は良好だと思う。

だって、その人と僕は常に一緒にいても嫌がる気配は無く、いつも彼女から僕に話しを始める。

僕はそんな彼女のことが徐々に気になり、好きになっていった。

そんなクリスマスイブの日、彼女からイルミネーションを見に行きたいと夕方誘われ、僕は家を出た。

 外は寒く、たまに吹く風が肌を刺すように冷たい。

「もう少し厚着をしてきたらよかったな...」

家の中で出かける準備をしている時は、少し厚着しすぎかと思ったが案外外は寒かった。

ポケットに手を入れ、待ち合わせの駅へと足早に僕は向かった。

 駅に着くと多くの人で賑わっていた。

なんで今日はこんなに人が多いんだろう。

まだ待ち合わせの時間まで少しある。

僕は多くの人が向かう方へ興味本位で向かうと、駅から少し離れた駅前広場でクリスマスマーケットが開催されていた。

色々出店してあるお店を、見て回っていると

「あっ」

そう声が聞こえ僕は振り返るとそこには、飯山さんが湯気の立っている紙コップを持って立っていた。

「飯山、もう来てたんだ」

「うん。ちょっとクリスマスマーケットが気になって、家を少し早めに出て来た」

「福田君もクリスマスマーケット来てたんだね」

「ちょっと予定よりも早く着いたから、興味本位で来てみた」

僕がそう話すと、飯山さんは紙コップに入ってる飲み物を飲んで

「このココア、美味しいって評判で飲んでみたけど美味しいから、福田君も飲む?」

きっと僕が彼女が持ってる紙コップを見ていたので、欲しがっていると勘違いしたらしい。

だから僕はしっかり訂正した。

「欲しいわけじゃないよ。ただなに持ってるのかなって気になってただけ」

すると飯山さんは「そっか」と言って自分が飲んでいた紙コップを僕に渡した。

「はい、これ飲んで暖まって」

急に渡された紙コップに入ったココアに、僕は戸惑ってると

「人の飲みかけとか嫌なら、新しいの、私買ってくるから待ってて」

そう言って彼女は買いに行こうとしたから

「そうじゃないよ。たださ...」

僕は恥ずかしくて言えなかった。

「間接キスになるの恥ずかしいって」

 自分の心を無にして、ココアを一口のみ

「熱いかなと思って、なかなか飲めなかっただけだから」

本音は恥ずかしくて言えないから、僕は慌てて嘘をついた。

「なんだ、それなら早く言って欲しかったよ」

と言って笑いながら

「それ飲んだら、イルミネーションしてる公園に行こう」

「うん。ちょっと待って」

暖かいココアを僕は飲み干し、今日の目的地のイルミネーションをしている南公園へと歩いて向かった。

 南公園に近づくにつれて、カップルが目立つようになった。

僕は歩きながら、もしかしたら、端から見たら僕たちも、付き合ってる恋人同士に見えるのかな。

そう一人くだらないことを考えながら歩いていると

「ねぇ福田君、人が多いから、はぐれないようにさ、手、繋ごうよ」

顔を赤くさせながらたどたどしく飯山さんは言った。

この彼女からの誘いに

「う、うん。離れると、こ、困るもんね」

恥ずかしいがあまりに、僕もなぜかたどたどしい言い方になりながらも、僕たちは手を繋いだ。

手を繋いで歩いていると、ふと、僕は思った。

「今、自分の心臓めっちゃバクバクしてる!!」

「この振動、飯山さんに伝わらないよね?!」

その心配ばかりで、僕はドキドキしっぱなし。

変な事ばかり色々考えちゃって、気がつけば目的地の南公園に着いた。

 南公園に着くと、イルミネーションがあちこちにしてあった。

また恋人達も、公園のあちこちにいる。

僕はなぜか緊張しながらも、飯山さんと一緒にイルミネーションを見たり、写真を撮ったりして、冬のイルミネーションを楽しみ、少しはしゃぎすぎた僕対は公園のベンチに座り一休みをした。

「ねぇ、福田君。今日は急な誘いにも来てくれてありがとう」

「いいよ、そんな事気にしなくて」

「ううん。こうやって急に誘ってもちゃんと来てくれるのは、福田君くらいだからとても嬉しいよ」

「そう言ってもらえるのは、とてもありがたいよ」

僕たちはベンチに座り話しながら、公園のイルミネーションを見る。

「ねぇ、あそこに見えるイルカのイルミネーション。とても綺麗だよね」

「確かに、あそこのイルミネーションの写真、何枚か撮ったもん」

くだらない話しを僕たちは交わす。

どうでもいいけど、このちょっとした時間、ちょっとした会話が心地よくて、僕たちは時間なんか気にせず話し、1台のスマホでさっき撮った写真を2人で見ていると、距離が近かったのか、頭をお互い軽くぶつけた。

「ゴメン、近すぎたね」

飯山さんは恥ずかしそうに笑って言った。

「そうだね、ちょっと近かったね」

僕もそう飯山と同じように言った。

そして、僕は周りの風に当てられ言ってしまった。

「飯山さん、僕は、君のことが好きだ」

急な事に彼女はテンパり目をパチクリさせていた。

だからもう一度、今度はしっかり目を見て言った。

「僕は君と出会って関わるようになり、徐々に心が惹かれていき好きになりました」

「もしよければ僕と、付き合ってください」

 本当は隠しておくつもりだったこの気持ち。

だけど、周りの恋人達に当てられ、とうとう言ってしまった。

どんな返事が返ってくるか分からない恐怖感にさえなまれながら、彼女からの返事が返ってくるまでの1秒が、僕にとって1分に。1分が1時間に感じる。

そんなドキドキしている僕に、飯山さんは言った。

「お気持ちは、と、とても嬉しいです」

「ですが、私なんかより他の人の方が何倍も可愛くて、優しくて、魅力的な女性だから、私を好きになるのはやめた方がいいよ」

そんな卑下する君に

「君の方が何倍も僕からしたら他の人よりも可愛くて、周りに気を配る事もできて優しいし、魅力的な女性です。だから他の人なんか気になりません」

そう、誠心誠意僕は自分の気持ちを伝えた。

すると君は頬を赤く染め、僕にだけに聞こえる声音で「ありがとう」と言って笑って背を向け、少ししてから

「そ、その、私も福田君のこと、好きだよ」

そう彼女は顔を真っ赤にさせながら言った。

 急な告白から、友達から恋人へと関係値が変わったクリスマスイブ。

告白したばかりで未だドキドキと胸の鼓動は早く、友達から恋人へと関係性が変わった喜びで体が熱い。

未だ恋人になった実感は薄いが、これからきっと、僕たちは今までよりも強い絆で結ばれたはず。

僕は、周りに流されたけど告白して良かったと思いながらも、夜風が体の熱を冷やす。

徐々に体の熱が冷め、少し肌寒く感じた頃、飯山さんが寒いねと言った。

「そうだね、しばらくこのベンチでゆっくりし過ぎたもんね」

「確かにそうだね」

「そろそろ今日は帰ろっか、あんまり長いし過ぎると風邪ひいちゃうし」

飯山さんが笑って言う。

「そうだね、あんまり夜風に当たりすぎるのは良くないね」

そう言って僕たちは手を繋いだ。

特にお互い手を繋ごうなんか言わずに。

そして静かに駅へ向かって歩き始めた。

冷たい風が頬に触れるけれど、僕の心はずっと暖かいままだった。

この先もずっと、彼女とこんな風に並んで歩いていけるのかもしれない。

――そんな未来を、少しだけ夢見て。

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生きることが辛くても、きっと何かがかわると信じて かみっち @kamizyou

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