生きることが辛くても、きっと何かがかわると信じて
かみっち
生きるってことは辛いってこと。
誰かが教えてくれた。
私の知らない誰か。
もしかしたら夢だったかもしれない。
昔の話し。
私は極度に気分の浮き沈みが激しい。
だから普段は何て無くても、数時間後、もしくは数日後には気分が沈んで【死にたい】【生きるのが辛い】と思ってしまうことがある。
特に理由はないけど、そう感じてしまう。
心の中にきっと、何か、モヤモヤとしたような何かがあるような気もするし、何もないような気もする。
だけど、自分では分からない。
だからこそ自分で、この気分の浮き沈みに対処しきれず
「もう疲れた」
「生きる気力がない」
「明日が来なければいいのに」
「このまま眠って、目が覚めなければいいのに」
そう思ってしまう日がよくある。
そんな自分の気分の話しを、誰かに打ち解けることも無ければ出来る相手もいない。
いつからこう、自分の気持ちを制御することが出来なくなったんだっけ。
私はそう思いながら夜、一人何の目的も無く夜の街を歩く。
夜の街は静かで、人一人いない。
私はそんな夜の街を歩きながら、1時間くらい当ての無い散歩を続け、家の近くの公園へとやって来てベンチに座った。
「明日は何をしよう」
何をしようと言っても、朝起きて会社に行って、ミスをして怒られ、定時で退社できず夜まで残業し帰宅。
代わり映えのしない毎日に、私はきっと億劫で退屈なんだなと思いながら、縛られる生活はもう、終わりにしたいと思いながら夜空を眺めた。
街の明かりで星なんてそう綺麗には見えない。
最後に綺麗に見た星はいつだったかな。
そう昔を思い出しふと、久しぶりにブランコでも乗ってみようと思い私はブランコをこいだ。
懐かしいなこの感じ。
昔公園で遊んだ記憶がフラッシュバックする。
私は一人ブランコを漕ぎながら「ハァ...」とため息をついてしまい
「生きづらいな、世の中は」
そうポツリと出た言葉に、一人納得しながらまた星空を眺めた。
星空を眺めてどのくらいが経っただろう。
時より吹く風が少し冷たく、私は明日も会社があるからもう帰ろうと思いスマホの時間を見て、帰ることにした。
だけど体はなかなか動こうとはしない。
しないんじゃなくて、動きたくはないと思いただその場から動かないだけの私。
頭の中では分かっている。
もう家に帰って、寝ないと明日会社に行けなくなる。
でももう少しだけ、この公園で心を休めていきたい。
そう、私が思っているとスーツ姿の男性が公園の中へ歩いてやって来た。
私は目を合わせないようにと思い、空を見上げ気づいていない振りをする。
変に絡まれても困る。
私はそう思ってしばらく空を眺めていると
「星、今日は綺麗に見えますか?」
落ち着いたトーンの低い声で話しかけられた。
きっと、さっき公園にやって来たスイーツ姿の男の人だろう。
そう思い視線を声の聞こえた方へと向けた。
やっぱりそうだった。
さっき公園へやって来たスイーツ姿の男性。
私は「えぇ、ある程度は星、綺麗に見えますよ」
そう社交辞令のついでに言葉を返すと
「ですね。でももっと地方の方へ行けばきっと星は綺麗に見えるのでしょうね」
「多分、どこから見てもそう変わらないですよ」
「地方から見ても、住んでいる場所が明るければ、今とそう変わるような事はないと思います」
「そうですかね、少しくらいは変わると思いますよ」
このどうでも言い会話に、私は何だか少しリラックスする。
なぜかは分からない。
でもきっと、人とちゃんと話すのが久しぶりだからだろうか。
私はそう思いながら空をまた眺めると
「君の顔は、何だか暗くて、落ち込んでいて、少しばかり何かを誰かに、話したそうな顔をしていますね」
男性がそう唐突に言った。
「そうですか?」
「はい、あと、疲れてますね」
「疲れてはいますよ。生きるために、お金を稼がないといけないんで」
「ですよね、お金稼がないと生きていけませんもんね」
「そうですよ。だから私は生きるのが辛いんです」
「生きるために労働して、お金を稼いでまた、明日の生活のために一日働く。そんな生活に私、少しつかれちゃったんです。今、なんだか気分が落ち込んでるのでそう、考えてしまってるだけかもですけど」
見知らぬ人だからこそ、こう、ラフに話せるのか分からないけど、私はそう話した。
すると男性はそうですかと言って
「無理はしないようにしてくださいね。頑張りすぎるのは体によくないんですから」
「わかってますよ。でも人は生まれた時点で労働という罰が神様から与えられてるんです、平等に死ぬまで。だから頑張り過ぎないようにと思っても、生きるために頑張ってしまうんですよ、罰だから」
「それ聞いたことありますよ、宗教の言葉ですっけ」
「ですです」
私たちはしばらく、労働とは何か。働くとは何か。生きるとは何かを話した。
そして夜も更に更け、そろそろ家に帰ろうと思い別れの挨拶をした。
すると男性は私に言った。
「さっき生きるとは何かと話しましたが、貴女が死にたいと思っていること。それは別に普通に考えるのは、悪いことだとは思いません。だって私達は人間だから、心があり、辛い時には逃げたいと思うのも分からなくありません。だから私は貴女がもしこれから先、自殺をしようとしても止めません。だって私に止める権利は一切私にはありませんから」
この言葉に、なぜか白状な人だなと思ってしまった。
でもすぐに思った。
だって私と関わったのが今日が初めてだし、まだ話して2時間ちょとしか経っていないから、そう思うことは普通かと。
だから私は「そうですか」とだけ言うと
「でも一つ、死ぬ前に思い出してほしいです」
「死にたいなら死ねばいい。生きたいと思うのなら、生きればいい。でももし、貴女が自分でその命を殺めるとき、それを止めてくれた人がいるのなら、その人のために今度は生きてみるといい。その生き続ける世界は少し変わるかもしれない。少し変わるがどのくらい変わるかは分からない。ほんの少しかもしれないし、ミクロレベルかもしれない。でも、生きる世界が少しでも変わるなら、生きてみる価値はあると私は思う。
だから忘れないでほしい。
もし貴女が自分でその命を殺めるときが来るのなら、私がこの言葉を言ったことを」
そう言ってスイーツ姿の男性は立ち去った。
私は何も言えないまま、ただ彼が言った言葉を思い返す。
「もし自分で自分の命を終わらせるのなら、終わらせるのを止めてくれた人の為に生きてみるといい。その生き続ける世界は少し変わるかもしれない。少し変わるがどのくらい変わるかは分からない、かぁ...」
これって、遠回しに生き続けろって言いたいだけじゃ。
私はクスクスと笑った。
だって、何だかプロポーズみたいなこと言われた気がしたから。
だから私は思った。
今日を生きてて良かったと。
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