第19話 タバナハ、シュガー、ノルの思惑は……
マシラツラとおなじく、大きな
エトバリルが用意させた
「ワシが甲冑ゴーレムをエトバリルほど信用する気になれぬのは、こういう対策が用意できるからだ……高い費用をかけても、壊されるのはひと
とマシラツラが低い声でつぶやきますが、エトバリルには聞こえません。巨獣部隊パダチフが崩壊してエトバリルに当てつけを言われましたから、反論の意味のひとりごとだったのかもしれません。
マシラツラは城のあちこちに目をくばり、また魔法の
エトバリルが部下に命じます。
「バリスタ、ラダパスホルンの甲冑ゴーレムの
ラダパスホルンの灰色ロボットの
じっさいに、バリスタは思った通りの力を
が、動きを
エトバリルが
「敵は
近くにいた兵士が、
「ラダパスホルンの甲冑ゴーレムはもうそこまで技術が進んでいるとは」
と言いますが、
「ならば、弱みは命令を伝える魔力。伝達を乱されれば操作できなくなる道理だ」
エトバリルは魔法の力で遠隔操作をいっせいに
灰色ロボットに向けて
しかしエトバリルの意図どおりにはいきませんでした。灰色ロボットは動きを止めません。城は破壊され続け、甲冑ゴーレムも灰色ロボットもお互いの武器で
「遠距離からではラダパスホルンの魔法を
と、エトバリルはますます表情をかたくします。
「ベルサームが遠隔操作を実現したおりには、同じていどの性能に仕上げてみせるわ。そして、遠距離からの
エトバリルは地を
「敵の甲冑ゴーレムからもどこかに
マシラツラ自身もまた、戦いをおこなっています。垂直な城壁を走って移動して、
「エトバリルを守るのも
これも始末しました。
マシラツラが飛ぶトリのような素早さで
「……敵の甲冑ゴーレムはどうだ、エトバリル」
マシラツラは中庭を見やりました。
中庭のエトバリルは、地をすべるように灰色ロボットにちかづき、接触して一体を無力化するのに成功していました。灰色ロボットは、魔力でダメージを流しこまれ倒されました。
しかしすぐにほかの灰色ロボットがかけつけて
いまいましそうな顔でエトバリルは引き下がりました。彼の攻撃で停止していた灰色ロボットもぎくしゃくした動作ですが、動き出します。
ラダパスホルンのやりかたがエトバリルにもわかり始めていました。
「おそらく上空の、さほど離れていないところに強力な魔法使いを
夕暮れのオレンジ色に
エトバリルの目にもうつらなかったのですが、じっさいにその視線の先にはメルヴァトール・イムテンダスがありました。二十メートルもある巨大な人型のロボットが、
マシラツラが、エトバリルのそばに姿をあらわし、
「
と言い残し姿を消しました。ここには自分の仕事はないと見てのことでした。
イムテンダスは、白色を基調としたボディの、古めかしい土器などの
得意とする能力は、
メルヴァトールの中でももっとも魔力伝達の能力が高く、また周囲の光をねじ曲げて自分の姿を見えなくする能力を有しています。城の上空まで気づかれずにこられたのも、姿を隠す能力を使っていたからです。
浮かんでいるイムテンダスには、ボニデール・ミューが
ボニデールこそが、ラダパスホルンの最高のパイロットでした。
ボニデールの魔法のパワーをイムテンダスがあますところなく灰色ロボット、リュストゴーレムに伝えているのです。強力なマリオネットの糸で操っているといったところです。
エトバリルが兵士を呼びます。
「リムエッタを出させる。リムエッタには私が
「はっ、しかしリムエッタ
「時間のムダだ。城の一部を破壊して移動させる。移動線上の兵士を
「はっ、かしこまりました」
兵士が立ち
「メルヴァトールめ、なにするものぞ。私とリムエッタで
その時、シュガーは獣の檻の開放をあらかた終えて城壁よりさらに高いの塔の上部に移動していました。城の人間にまぎれるためにメイド服にもどっています。
「デンテファーグが、
通信の相手は、ラダパスホルンの王、マーケンアークその人でした。シュガーの
「マーケンアークである。万が一のさいには指示をまかされておる。現在、わが国の
シュガーの表情は、表立っては変わりません。けれど目には怒りと失望の炎がゆらめいています。
マーケンアーク王はつづけます。
「お前の命を失っては、今は
シュガーはラダパスホルン国そのものから依頼を受けたのではありませんでした。彼女はたいへん気むずかしい自由人で、気に入らない相手とは仕事をしない性格でした。ラダパスホルンの王族や貴族をきらっていました。今回の仕事はあくまでデンテファーグ王子の個人の依頼でした。
彼女にとって親しみを感じる数少ない人物が、ラダパスホルンのデンテファーグ王子だったのです。
しかし、そこに悪い相手が現れます。
マシラツラが彼女の正面にしゃがみこんでいたのです。
仮面を
「お前で最後だ」
高い城壁の上を風が通りぬけていきます。
シュガーのメイド服もマシラツラのマントも風にあおられてバタバタと音を立ててゆらめいています。
二人は無言でゆっくりと城壁の上を移動し始めました。視線を片時も相手から離すことなく、ほぼ平行線をとりながら。
厳密には、ごくごくわずかに、二人は距離を縮めていっています。城壁を
そのころの中庭。
ラダパスホルンの灰色ロボットたちの
甲冑ゴーレムが量産されていることは疑いないとわかり、彼らは作戦を
戦いのフィールドが青色の甲冑ゴーレムから遠ざかったので、トキト、ウイン、パルミも合流するチャンスがあるかもしれません。また五人にもどりたいところです。そして甲冑ゴーレムで脱出するのです。
エトバリルは灰色ロボットが城門のほうへ後退していくのを見て、安心した表情を浮かべます。
灰色ロボットたちが城門近くに固まります。
エトバリルは切り札であるリムエッタを呼ぶために思念を集中させています。
このとき、レサ・ケロムの一体がまだ城内に残っていました。レサ・ケロムは大猿二種のうち、小さめの体格をしたほうです。このレサ・ケロムは体毛がほかの大猿たちと違い、
そこで、エトバリルが一人になっていることに気づいたのです。
エトバリルが思念に集中しているのを、
ヒトの頭ほどある
タバナハがその場にとびこんで、
「だめ、ゴグ!」
と止めようとしました。
が、間に合いませんでした。エトバリルは視線も向けないまま、片手を軽く振って処置を終えました。
ほんの一瞬だけ光が、レサ・ケロムのゴグの
それだけで終わりでした。ゴグの体がゆっくりと地面に倒れてゆきました。命があっけなく失われたのでした。
「ゴグ!」
タバナハがゴグの体におおいかぶさるように
しかし、このときのエトバリルの
ノルが空中から現れました。エトバリルが使ったのと同じ
ノルは、エトバリルから素早くカロカツクーウをつかみ、
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