第8話 トキト必勝・ファッションショー!
ウインはハンドルを両手でかたく
「動いて、
ウインの願いにこたえてくれたのか、甲冑ゴーレムは歩き始めました。
見ると、中庭にずらりと並んだ
大猿オピ・ケロムは、二階建ての家の屋根ほどの身長があります。頭のぶんだけ甲冑ゴーレムを上回る大きさです。
どの檻からも、
「
トキトが、「えいえい、おう」の代わりに、でたらめな
「俺の甲冑ゴーレムはゲームセンターの戦闘ゲームをイメージしたから、使いやすいぜ。コマンドを入力したら
カショカショ、ガチョガチョと二本レバーを動かす音が聞こえます。
トキトのゴーレムは赤い
「前ダッシュ、
トキト機が
大猿が
しかし、組み合ってからわずかな時間で、あきらかな差が出ました。大猿オピ・ケロムは押されるままにうしろに下がりはじめました。トキト機が足のつま先に力をこめ地面をふみしめてぐんぐん前進し、オピ・ケロムは
ベルサームの兵士たちから驚きの声が
「おおー」
「なんとすばやい」
「これほどの力とは」
ここまでほとんど私語らしいものを発しなかった
「やるわねー、トキトちゃん。でもオピ・ケロムは一頭だけじゃないのよ、気をつけて」
いつの間に移動していたのでしょうか、ノノレクチンが中庭の真ん中あたりにいます。トキトの甲冑ゴーレムのほんの近く、危険な位置です。のんびりした声でトキトたちに注意をあたえていきます。
「まわりのオピ・ケロムとデサメーラが集まってくる前に、動けるウインちゃんとパルミちゃんで、トキトちゃんのわきを固めて、急いで急いでー」
ノノレクチン本人はちっとも急いでも
ウインとパルミは、その言葉にあせりました。
「トキト、囲まれたら危ない」
「一人で
ウインの
トキトのゴーレムが大猿を檻に押しもどしてしまうと、兵士たちにによってふたが閉じられました。
「まずは
トキトの軽口は地球にいたころのままでした。おそらくはじめての機械での戦闘で、精神がたかぶっているのでしょう。
「トキト、私たちは君ほどうまく
「だしょ、だしょ。トキトっち、あんまし期待しないでおいて」
「わかった。
赤いゴーレムが突然、地面に
――まさか攻撃を受けたの? 近くになにもいないのに?
と、ウインはとっさに思ったのですが、かんちがいでした。
実際にはスライディングの姿勢でパルミのゴーレムのわきをすり抜けるトキト機の動作でした。
人間の体であればスライディングでパワーを出すことはできないのですが、ゴーレムはちがうようです。トキト機は、デサメーラが頭を低くして突進してきていたのに気づいて飛び出したようです。
トキトの甲冑ゴーレムは、スライディング・キックをします。デサメーラの
「あっ、ひっくり返ったら、あたしでも押せるかも。まっかせて」
オブシディアンカラーのゴーレムが不器用に音を立ててゴキョゴキョと走り、デサメーラを
「いっちょあがりー」
パルミがデサメーラを檻にもどすことに成功しました。
「トキト、こっち、大猿がいっぱい来てる」
「こっちも必勝、ファッションショー!」
トキトの赤いゴーレムはいったいなにをどう入力すればそう動くのかわかりませんが、
ファッションショーと言っていたので、もしかしたらファッションモデルさんがランウェイで見せるモデル歩きを
「いやいや、モデルさんに失礼でしょ。あれは左右をキョロ見しながらヒゲダンスに失敗している人だって……」
と、トキトに聞こえないようにウインは操縦席でつぶやきました。
ジグザグの動きで進みながら、腰で二体の大猿をバインバインと
「バカみたいな動きだけど、バカ強い!」
パルミは声を小さくしたりせず、大声で
そんなパルミの甲冑ゴーレムの近くで、パルミに呼びかけている人がいます。
「おーい、パルミ少女ー。こっちにはデサメーラが来ているぞ」
あいかわらず無表情なのに、まるで山でやっほーと
メイドなのに、ノノレクチンといい、シュガーといい、
「ひゃあああ! ヒヤヒヤだ冷や
パルミの叫びは、トキトの
ウインは自分の操縦席にもゲームのコントローラのパッドがついていることを思い出します。
ゲームなら、トキトにも負けるつもりはありません。とはいっても、はげしい戦闘のあるゲームは、ほとんどプレイしないのですが。
「ゲームのパッドまであるんだし、マイクロフォン機能くらい、ついてるでしょ。パッドにくわえて音声入力。ウスベニちゃん、パルミのクロカナブンをかばって、四つ足の獣に
ウインの機体はすばやく動きました。デサメーラに足払いはあまり有効ではありませんでしたが、頭突きで下がらせることができました。音声に反応してくれたようです。
「ひどいよウインちゃん。そっちのゴーレムがウスベニちゃんなのに、こっちはクロカナブン!」
「動くよ。パルミも音声、試してみて。あとごめん。黒くてピカピカしてたから。ゴキよりいいでしょ」
「コクヨウセキのコクヨウちゃんだから! コクヨウちゃん、ビーム攻撃、ミサイル攻撃、マシンガン、
パルミのゴーレムは
「パルミちゃーん、こっちの世界は、
「ノノレクチンさん、なんでそこまでくわしいのっ!」
ウインが
「またあとの機会に説明するけど、地球にはちょっとくわしくてね。ふふ、またあとのお楽しみ。だから、今は生き
同じように戦場で平気な顔しているシュガーが
「ウイン、パルミ。二人もトキトのように
シュガーはシュガーで、少し変わった人なのでした。兵士たちがゴーレムと獣との戦いを
二人の正体とか目的とかがすっかりわかるのは、まだ先のようでした。
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