これは、奴隷地区という過酷な環境で理不尽な暴力を受け命を落とした少女が、転生してその体に魔王という強大な存在を宿し、復讐と成り上がりの道を歩み始める、虐げられた者たちの怒りと反逆の物語です。
かつての無力な少女とは対照的に、冷静で知略に長けた転生後の主人公アシェン。自らの力を隠し、支配する側とされる側の構造を見極め、最高のタイミングで反逆の牙を剥くその時をうかがいます。絶望的な状況の中で見せる圧倒的な戦闘力が、その底知れぬ強さを印象付けます。
エリンとカイは、それぞれアシェンの転生後の生き方を象徴する重要な存在です。エリンは転生前のアシェンに優しく接していた唯一の存在であり、転生後もアシェンの「守りたい者」として物語に深みを与えます。一方カイは奴隷たちの未来を信じて行動するまっすぐな少年、理想に燃えながらも現実の非情さに翻弄されています。
リアルな戦闘描写と研ぎ澄まされた心理描写。異能と知略を用いたアシェンの戦闘スタイルは読み手をグイグイ引き込みます。またそのシニカルな語り口も独特の雰囲気を生み出しています。
奴隷の身から王へと駆け上がる成り上がりの物語。 しかしその道は単なる復讐の成就にとどまらず、世界の理そのものへの挑戦を示しているのかもしれません。アシェンの力が帝国の支配をどう揺るがしていくのか。革命の火が燃え広がるその先を見届けたくなる物語です。