公衆電話
キョウスケ
公衆電話
大学三年生で部活に通ってる身だけど同期の
佐藤は本当にウザい。マジで死んでくれ。
なぜかって?同期の俺や友達に対してタバコ、パチンコの為の金銭を要求してくるからだ。その上、先輩がいないのをいいことに男女関係なく後輩に対して執拗にパワーハラスメントをする。自分の失敗を後輩に責任転嫁する。
といった具合にやりたい放題。そのせいで佐藤を理由に部活をやめた後輩も少なくない。
そんな悪影響や苦しみしか与えない同期がいる毎日を過ごしている。
本当にマジで死んでくれ。
苦しむ人がいなくなるんだから。
そんな風に思う佐藤のせいで疲れたある日の夜
ポストの中に俺宛の一通の手紙が入っていた。読んでみると「殺して欲しいと思う人がいるならどうぞこちらへ」という一言と電話番号が書かれていた。最初は詐欺やイタズラの類だと思い無視していた。
しかし、これまでに「もしも佐藤がいなかったら」を考える事がしばしばあった。そこで電話をかけてみる事にした。今日は詐欺やイタズラに付き合うのも悪くない気分だし。また、万が一トラブルが起きてもいいようにスマホではなく自宅近くの公園にある公衆電話を使う事にした。そういえば、と思い時間を確認すると21時を回っていた。けど、思い立ったが吉日とも言うからすぐに行こう。そう思い、すぐに公園にある公衆電話へ向かう。ガチャリと受話器を上げ、10円玉を入れ、手紙に書いてあった電話番号を打ち込む。受話器を耳に当てる。数秒すると電話は無事に繋がった。すると突然、若い女性の声で「殺して欲しいと思われる方はいらっしゃいますか?」と質問され驚いた。どちらかといえばまずこっちが質問したいんですよね。気になる所が色々あるんだから。それにしても相手がいきなり質問をしてくるとは思っていなかった。それでも、やっぱりよくできた趣味の悪いイタズラだったか、と思った。しかし、ここで「もしも佐藤がいなかったら」を思い出す。そこで、通話をしている相手に佐藤の名前をダメ元で伝える事にした。そして、相手に佐藤のフルネームを相手に伝える。伝え終わると相手は「わかりました。」とだけ返事をし電話を切った。突然電話を切られたせいで思わず「は?」と一言出てきてしまった。そしてキレ気味になりながら受話器を元あった所にかける。その後、いきなり電話を切るとかありえないでしょ。特にこっちから電話してるんだからさ。そう思いながら公衆電話を後にした。
次の日からは、手紙の内容はやっぱり
よくできた趣味の悪いイタズラだったんだなと
思いながら佐藤のせいで疲れる毎日を
送っていた。
しかし、公衆電話で電話をしてから
5日程経ったある日突然
住宅街の一片にあるゴミ捨て場で
佐藤が絞殺された事が
朝のテレビのニュースで報道された。
犯人はまだ見つかっていないらしい。
次のニュースが流れるテレビ画面を見ながら
突然、あれ?となる。
俺が5日くらい前に
公衆電話で通話した電話の相手の
「殺して欲しいと思われる方はいらっしゃいますか?」という質問に対する返事で佐藤の名前を伝えた。もし、電話の相手に佐藤の名前を伝えた事が理由で佐藤が殺されたなら
俺は取り返しの付かない事をしたのかもしれない。そんな事を考えていくうちに自身の所業であるという実感が湧いてきたのか
「人を殺してしまった」という事に気づいた。
俺は人殺しだ。
バレたらどうすればいいんだ…
いや待て、そもそもおかしな話だ。
電話の相手は佐藤の名前以外の事を全く
知らない以上殺せるがはずがない。
けれど、佐藤が殺されたのは事実。
そうだ、きっとこれは何かの間違いだ。勘違いだ。悪い夢だ。それに誰のせいかは相手に電話をかけて相手の事を問い詰めて確認すればいいだけだ。俺と同じ様に佐藤の名前を伝えている人が他にいたのかもしれない。他の人のせいなら俺は人殺しにはならない。それに、「人を殺す事」が出来るなら逆に「人を生き返らせる事」が出来るかもしれない。まだ遅くない。今からでも間に合う!自分の事をそう言い聞かせ、公園にある公衆電話へ駆け込み、大急ぎで手紙に書いてあった電話番号に電話をかけると、無機質な音声で「おかけになった電話番号は現在使われておりません。」と流れてきた。
公衆電話 キョウスケ @K5Y
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