学生時代! 喫茶店のお姉さん!

崔 梨遙(再)

1話完結:1100字

 学生時代、よく行く喫茶店が2軒あった。1軒は、親しい級友と主に学校帰りに寄る喫茶店。おばちゃんが経営しているムーディーな店。僕等のたまり場だった。


 もう1軒、僕が朝に行くことがある喫茶店があった。前述のムーディー喫茶店に行くメンバーとは違うメンバーと会える喫茶店だった。その店に行くのは朝だった。


 何故、朝に行くのか? トイレだ! 僕は学生時代、胃腸が弱かったのか? 通学途中、歩いていると便意をもよおすことが時々あった。学校までもたないので、トイレを借りるために店に入る。そうなると、何か注文しないと気まずいのでモーニングを注文する。そういう日は、遅刻が確定してしまう。


 すると、留年生の総司と会うことが多い。総司は僕が座っているテーブルに座る。


 その店には、年齢不詳のウエイトレスがいた。名前は朱美。20代なのはわかっている。だが、21歳なのか29歳なのか? わからないのだ。年上のお姉さんという雰囲気があったので、20代の半ばか後半だと思っていたのだが、このお姉さん、美人ではないが色気があった。スレンダーで、身長は163から165くらいだろう。僕等はこのお姉さんによく話しかけた。


「お姉さん、一度デートしてや」

「アカン、学生は勉強しなさい」


 気楽に声をかけて、気楽に断られる。それがいつものやりとりだった。



 時が経ち、就活のシーズンになった。


「崔君、就活はどうなってるの?」

「もう決まってるで」

「どこ?」

「〇〇〇〇」

「嘘! 大企業やんか」

「うん」

「崔君」

「何?」

「デートしようか?」

「え!?」


 デートした。朱美は上機嫌だった。自分から腕を組んできた。非常にわかりやすい。“手の平を返す”とは、このことか? 僕は“手の平を返す人”を初めて見た。


 ランチ、映画(映画館でも腕を組まれた)、ディナー、ちょっとお酒も入っていい雰囲気、“あ、これは今晩いけるな”と思った。


 僕達はその夜、ホテルに泊まった。


「私、最近、結婚を考えてるねん」


 朱美は露骨に結婚という言葉を口に出すようになった。僕は悩んだ。そこで、ふと思った。“大企業に就職することが決まってスグに手の平を返す人は信用できない”。



 僕は朱美と距離をとるようにして、うまく自然消滅させることに成功した。だが、僕はその後、結婚に2回も失敗した。それで思った。どうせ失敗するなら、色気のあるお姉さんの朱美と結婚しても良かったかもしれないと。



 皆様は、朱美と結婚していたら良かったと思いますか?







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