第5話
「いやさ、お前に伝えたい事があってな」
店主は、かつての悪ガキの笑みでヨシアキに話し出す。
「なんだよ?」
不思議そうなヨシアキに店主はそのまま話を続ける。
「お前、娘の同級生にヤクザだと思われてるぞ?」
ヨシアキを知っている店主は、噂の事を本人に伝えた。
「なんでだよ?俺は看護師だぞ」
ヨシアキは、確かに元ヤンキーで今のファッションもその名残が痛いほど残っている。
その噂を聞いた店主は、面白半分でここにきたのだ。
「さすがにこの歳だし普通の格好にした方がいいぞ?」
なだめるように、店主はヨシアキの肩を叩いた。
「まいったなまったく」
ヨシアキは、その話しを聞くと少し落ち込んでいた。
「それでだ。ヤクザの娘と知ってもなお引越ししてしまう女の子に決死の覚悟で告白しにきてるってわけよ」
「ちょっと待て、噂を否定してねえのかよ。お前の悪い癖だぞ。それに引越しってなんだよ?リフォームするから荷物出してるだけだぞ」
店主は、相談を受けている時から、その事実を知っていた。
知ってる上で、アキトの背中を押したのだ。
ヨシアキはそんな店主に、やれやれと思いながら、呆れていた。
「まあまあ、それを知ってもなを告白する気合いがあって良いじゃないかよ」
一人満足げな店主。
「お前なあ。。。」
呆れながらヨシアキが、言葉を返そうとした時だった。
バチーーーーーーん
ヨシアキの家から近い、公園から響き渡るビンタの音だった。
店主とヨシアキは、その音がした公園の方に向かった。
そこには、座り込みながらユキを見上げるアキトの姿があった。
『あちゃああ』
店主とヨシアキは、その姿を見ていた。
「あんたね!噂ってお父さんの事でしょ?やくざじゃねえし、看護師だわ!引越しって何?どこにも行かないわ!!」
見下ろすユキの迫力はすごかった。
驚いて、ほっぺに手を添えながら唖然としているアキト。
「ヨシアキ。思い出すな昔の事」
店主はその姿で、20年前の事を思い出した。
ヨシアキが、今の奥さんであるルミに告白した時の事。
特攻服のまま告白したヨシアキは、その当時のルミに思い切りビンタをくらっている。
「田舎のヤンキーが誰に告白してんだ。タイムスリップがボケ!!」と気合いの入った言葉で罵られていた。
その時のヨシアキと、今のアキトは完全にリンクしている。
その後、必死に勉強してなんとか看護師になったヨシアキ。
アキトの恋が、この後どうなるか分からないが、時に初恋は激しい痛みと衝撃を与える。
「ユキちゃんは、やっぱりルミちゃんそっくりだな」
「ああ、俺も今でもあの時の衝撃は忘れられないな」
店主とヨシアキは、ゆっくりと公園から離れていった。
懐かしい思い出を思い返しながら。
〜終わり〜
告白 SINKA @bfsinka
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