第4話
「よおし着いた。行ってこい」
店主は、アキトの肩を強めに肩パンをした。
緊張した表情のアキトは、店主をじっと見て、ゆっくりうなずいた。
車の中で、店主はゆっくり待ち合わせの公園に向かうアキトを見送った。
そして、店主もその姿を見送ると、そっと車を降りてある場所に向かった。
アキトが待ち合わせ場所に着くと、急に呼び出されたユキが待っていた。
「急にどうしたの」
ユキは、緊張した面持ちで待ち合わせ場所に来たアキトに声をかけた。
アキトは、目の前にいるユキを見て、少し落ち着いていた心臓が暴れ出すのを感じていた。
その音は、待ち合わせをした小さな公園に響き渡っているかのように鳴り響いた。
落ち着かないのはわかっていても、平静を装い深呼吸をしながら、ユキに思いを伝えはじめた。
「ユキちゃん、上手く言えないけど、最後まで聞いて欲しい」
ユキも、普段のアキトと違う様子に、何かを察した。
「分かったよ。聞くよ」
アキトの緊張が、ユキにもそのまま伝わる。
お互いに、こんな経験は初めての事。
互いの鼓動が、相手に聞こえないかと思うほど、大きくなっていった。
そんな中、覚悟を決めたアキトは話を続けた。
「ユキちゃん、今日は俺の気持ちを伝えに来ました。本当に急にごめん。でも今しかないと思ったんだ」
アキトは真っ直ぐな目で、思いを伝える。
ユキもその姿に、真剣に向き合っている。
「急に連絡したのは、引越しの準備をしてることを知って、どうしても伝えなきゃと思ったんだ」
今にも吐き出してしまいそうな程の緊張の中、足も震え出しながら、アキトは言葉を続ける。
「正直な事を言えば、ユキちゃんの噂とかも聞いたけど、そんな事はどっちでも良い、それでも僕の気持ちは変わらない。このまま離れてしまうと思うと後悔すると思ったんだ」
自分の中の想いを吐き出していくアキト、最後の言葉の前に、もう一度目をつぶり、深く深く深呼吸をした。
不思議と最後の言葉を伝える瞬間、アキトの心臓の音が静かになる。
とても落ち着いている自分に気づく。
そしてゆっくりと目を開き、真っ直ぐユキを見た。
「ユキちゃん、ずっと好きでした。僕と。。。」
アキトが告白の言葉を言い終わる頃、店主はそのすぐ近くである人に会っていた。
「久しぶりだな、ヨシアキ」
「なんだ久しぶりだな。何しに来たんだシン」
店主が会っていたのは、店主の同級生であり、ユキの父親だった。
店主は、ユキが同級生であるヨシアキの娘である事を知っていた。
「いや、ヨシアキの娘に告白したいって奴を連れてきたんだよ」
店主は満面の笑顔で、ヨシアキと肩を組んだ。
「何やってんだよお前は」
そんな店主に、ヨシアキは半ば呆れていた。
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