第3話

店主はニッコリ笑い、ゆっくりうなずいた。


「簡単に言うぞ、悩むぐらいなら諦めろ、お前の思いはそんなもんだ」


店主は、真剣な眼差しできつく少年に言葉をぶつけた。

自分から見て子供の恋愛相談と軽くあしらうのではなく、あくまで店主流のやり方で。


「簡単に言うなよ。そんな簡単なら相談なんかこねえよ」


大人しかったアキトの言葉は、突然浴びせられた言葉に拒否反応を示した。


「あのな。世間がどうとか、相手が引っ越すだ親がどうとか関係ないんだよ。本気で惚れたなら、それも含めて突っ走れよ」


店主は、あくまで持論をアキトにぶつけていく。

迷いながら出口を探す少年に向けての、強いメッセージとして。


アキトは、そんな店主の言葉に何も言い返せず、悔しい思いのまま下唇を噛み締めている。


「例えば、世界中の人間から恨まれたり否定されても、本気の恋は止められたり出来ない。その恋が誰から見ても不幸しか未来になくても、ただ一点、惚れた相手とそばにいれるなら構わないと思えるかだぞ」


店主は、普段はそんなくさい事を言うのは恥ずかしいが、真剣なアキトについつい語り癖が出てしまっていた。

少し冷静になりながら、そのままの勢いで話しを続ける。


「この話しをどう思うかは分からん。でもよ、悩めるぐらいなら本当にそれまでだ。自分の心が止められないほど相手を思うのが愛だぞ。アキトの気持ちは本物か?」


アキトは、その言葉を聞きながら天井を見つめた。

ゆっくりと目を閉じて、深呼吸をした。


「何度考えても、諦めるのは無理だ。そんな噂を聞いても、気持ちは変わらない」


「青春だねえ。ならもう次にやる事は決まったな」


店主は、不適な笑みを浮かべる。

そして、そそくさと準備をはじめ店を閉めはじめた。


そんな店主を見ながら、アキトはキョトンとしていた。


「何ぼうっとしてんだよ。ユキちゃん引っ越しちまうんだろ?行くぞ」


店主は出口からアキトを手招きする。


「今からっすか?」


アキトは、急な行動に慌てている。


「男がうだうだ言ってんじゃねえよ。ほれ、行くぞ」


半ば無理やり、店主はアキトを車に乗せる。

アキトに道案内をさせながら、ユキちゃんに話しがあるとLINEをさせた。


「送っちゃいましたよ。どうしよう」


助手席に乗ったアキトは、急な展開と勢いに明らかに動揺している。


「もう向かってるし呼び出したんだ、覚悟を決めろ」


店主の方が、明らかにテンションが上がっていた。


「なんて言おう。シンさん、何んも決まってないよ」


動揺するアキトは、店主に相談する。


「考えなくて良いんだよ、そのまま思いついた気持ちをぶつけてこい。俺は少し手前でお前を下ろすから、頑張れよ」


アキトは、刻一刻と迫るその時を待ちながら、激しく鼓動を奏でる心臓を落ち着かせながら待った。

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