第4話

あなたは、素晴らしい人なんですね。

私のような人間とは、生きる世界が違うのでしょう。

あなたには、私の家族は見えていましたか。

あなたにとって、私の家族は、野良犬でしょうか、それともアリでしょうか。

私は、とても小さな世界で生きていました。

それでも幸せだったのです。

しかし、私は世間の平等なんて言葉が嘘だと思い出したのです。

あなたのような素晴らしい人と、私達は同じ人間ではないのだと。

私は、人に誇れる物は何もありません。

もちろん努力もしなかった人間です。

あなたにとって、意識する事もないアリも同然な存在なのでしょう。

私がどんな声をあげようとも、あなたには届く事もないのでしょう。

私はいくじがない人間です。

無力で無能な人間です。

何も出来ないのです。

私には、もう明日はないのです。

そう思っています。

世界は、もう私にとってどうでも良いのです。

あなたから多額の賠償金をもらっても家族は帰りません。

あなたをこの手で殺したとしても家族は帰りません。

私にはもうどうでも良い事だと思うしかないのです。

そう思うしかなかったのです。

私は、私の人生に何もないと思いました。

そう思っていたんです。

ですが、私は本当にダメな人間です。

でも、聞こえるんです。

それは私の勝手な妄想かもしれません。

家族の声が聞こえるのです。

私は、この命の使い方を考えています。

このちっぽけ命に価値はないのは分かっています。

どうすれば良いのかすらわからないのです。

暗闇の中で私はうずくまるしか出来ないのです。

ですが、私はこうして今日立ち上がり手紙を読む事が出来ています。


そして感謝をしています。

あなたは、一切の同情をする事が出来ないほどのクズであると。

あなたは私の大切な家族を奪い、多くの被害者を生んだにもかかわらず、まだ裁判以外は自由の身だ。

そして、被害者家族や当事者の見守る中でも堂々と責任を逃れる言い訳を垂れ流している。


私はあなたをこの手で殺してしまいたいほど憎んでいる。

けれど、私の家族を殺人犯の家族には出来ない。

それは私のエゴでしかない。

私のちっぽけな命の使い方を理解したつもりです。


ありがとうございます。

きっとこの手紙も、あなたには何も届く事がないのでしょう。

それでも、私のような人間に、最高の幸せをくれた家族のために使います。

私にはあなたのような地位も権力も財産もない。

それでも、私はこの命の全てをかけてあなたと戦う。

家族が誇れる父として。


あなたが、同情出来るような人間であれば、私は怒りの全てをぶつける事が出来なかったでしょう。

ですが、そんな思いはかけらも生まれない人間であって感謝をしています。


心からありがとう。

私はあなたを心の底から憎む事で、今日を生きてる。

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