電話
僕はまた、あてもなく歩き続けた。だが、今度はホテルの方に少しずつ歩みを進めている。こうやって、あのいた場所から僕はずっと、離れていく。ポケットに入ったスマホを見るのすらも怖い。あの子の連絡先がそこにあると思うと怖さで暑いのに身が震えてくる。
ヤシの木の葉が揺れ、風が少し暑さを和らげる。
撫でるようにふく風が心地いい。風に身を委ねていると、いつの間にかホテルについていた。
夕日も出ていてちょうど良い時間だ。
エントランスに入る。ホテルの顔とも言われているのに納得できるくらい豪華に装飾されている。
名残惜しいが、チェックインを済ませてエントランスから僕は去った。
エレベーターを使って上階にいく。エレベーターはガラス張りの面があり、ハワイの夕日を堪能させる作りになっている。いつもよりなんだか負荷を感じる気がする。なんとなく察しはつくが…旅行初日から散々だったな…。
受付で貰ったカードキーを握りしめ、自分の部屋へと重い体を動かしていく。
カードキーをかざし、僕だけの世界が開かられる。
大きく息を吸い堪能する。扉を閉め、荷物を一旦、開いた空間に置く。ベットに体を投げ出し、ベットにキャッチしてもらう。ベットはふわふわで、もうそのまま寝てしまいそうなくらいだ。
ブーッ、ブーッ、
ポッケからバイブの振動がする。ポケットに手を伸ばすのが面倒くさいし、なんだか怖い。
僕は体を起こして、スマホを取り出す。
自分に画面が見えないように取り出して、手首をヒョイと回して画面を自分の方に持ってくる。
「は〜…」
僕は大きく息を吐く。安堵の印だ。
「もしもし?ジャクソン?なんのようだ?」
「いや、旅行行ってるんだろ?どう?調子は?」
ジャクソンは孤児院時代の雄一の友達といえる存在だ。彼は今、養子になった人の農場を継いでいるらしい。結構大きい農場らしくなかなかに儲かっているらしい。
「いや…散々さ…」
「ほう。それはバットニュースだな。詳しく聞かせてくれよ」
「あぁ゛〜、クソ…」
思い出すのすら、なんだか嫌に気分になる。
「いいだろ〜?聞かせてくれよ〜?」
ビデオ通話じゃなくてもニヤついてるとわかる声色で煽られる。
「いや、まぁ、女関係なんだけどさ…」
「はっはっはっ!なんだよ!そんなしょうもねぇことかよ!」
「いや聞けって…!」
「女なんて、セックスしとけば男の言いなりなんだから!何が難しいんだよそんなに?」
「はぁ…」
頭に手を当てて点を仰ぐ。あぁ、神よ…。
「お前ってばほんっと、昔っから奥手だよなぁ!ほら、十五の時覚えてるか?」
「おい!ナンシーの話はやめろよ!まじ殺すぞ!」
「わぁったって笑、はぁ…、お前はチンポでかいんだからすーぐ女なんて虜させられると思うんだけどなぁ…?」
「だーかーらー…そうゆう話がしたいんじゃなくて…」
「まぁ一つ言っといてやるよ、お前は実は意外と人に好かれるタイプだぞ。相手がもしかして騙してたり嫌いかもったら思うほど、罠にかかって抜け出せないネズミみたいになるぞ。タイラー」
「あぁ…そうか…」
「ま、ちょっと電話するタイミングしくったかもなぁ、帰ってきたら話聞かせてくれよ。待ってるわ。」
「わかった…」
「まぁ、恋なら、この恋のプロ、ジャクソン・フレディに任せるんだな!」
「ういうい…」
電話を切ってスマホを放る。
疲れた体をベットが最大限癒せるように渡す。
天井を見ながら大きく息を吸う。
はぁ…なんだか、更に疲れた気がするぞ…
僕は生きづらい ヤマノカジ @yAMaDied
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