僕は生きづらい

ヤマノカジ

出会い

齢二十三にして、マッチングアプリを作り僕は全てを手に入れた。

ただそれでも何か一つ足りなかった。

それは愛だ。


バカンスできたハワイの太陽がジリジリと僕を照らしつける。

アイスクリーム屋も売っている途中にすぐ溶けてしまうんじゃないかと思うくらい暑い。

どこまでも続く水平線。

仕事で溜まった疲れがちっぽけな物なんだなと思わせられるくらいに広い。


時刻は14時、まだホテルに帰るには早い時間だ。

かといってどこかにいくあてもない。

熱いアスファルトの上を機械のように歩き続ける。


しばらくして、ビーチ付近を歩いていると、ビキニの女に声をかけられた。

「ちょっとそこのグラサンの人〜?ちょっとこっち来てくれない〜?」

僕は自分のことなのかわからなくて相手の方を見て自分を指さした。

「そうそう!そこのアンタ!」

アスファルトから砂浜へ

ビーチパラソルの下にいる彼女は近づいてく。

「あの…なんですか…?」

彼女は何も言わずに僕に日焼け止めを渡してくる。

「これ、お願い」

彼女は伏せるように僕に背を向ける。

これを塗ればいいのか…?

僕は少しの不安を抱えながら彼女の背中に日焼けどめを塗り始めた。

彼女の少し焼けたが白い肌に白が広がる。

肌に馴染んでいき、やがて白は目立たなくなる。

金髪の髪に似合う白い肌。

「塗り終わった〜?」

スマホを見ながら彼女は言う。

「あぁっ、うん。塗り終わったよ」

「ほんと〜?ありがとう〜、あたしヘンリー。よろしくね」

ヘンリーは起き上がり、手をグーにしてこっちに向けてきた。

「知らない?グータッチだよ。ほら、こうやってさ」


ヘンリーが僕の手をグーに変える。

そして拳と拳がぶつかりあう。

彼女が微笑み僕に質問する。

「名前は?」

「ぼ、僕は、タイラー。タイラージャクソン」

「ほーん…」

彼女がこっちを目を顰めて見始める。

「どっかできいたことあるなぁ〜?気のせいかな?」

さらに目を顰めながら身体を舐め回すように見てくる。

恥ずかして少し顔が赤くなってきた。

「あ!あれでしょ!マッチングアプリの!」

「あ…そうそう…」

「なんでここいんの?」

「いやぁ、ちょっとバカンスで…」

「まじ〜?有名人とアタシあってるわけ?信じられな〜い!」

妙に高い彼女のテンションに僕は圧倒されてしまう。

海の靡く音が彼女との静寂の時間を消す。

「「あのさ、」」

「「いや、」」

「「……」」

言葉が重なる。

少しの静寂が続く。

「あははっ!」

ヘンリーが盛大に笑う。

「あなたって面白い人!、本当にっ!はぁ…もう…あはは…!」

呼吸をするのがやっとなくらいに笑う。

僕は至って冷静のままだったが、彼女が笑う度、僕はなんだか嬉しい気持ちになった。

「あなたとは気が合いそう、お友達にならない?」

「友達…?まぁ、い、いいよ…?」

「じゃあ、メール交換しましょ!はいこれ私のアドレス!」

彼女は手慣れた手つきでスマホを差し出す。

僕は彼女のアドレスを登録して、スマホをしまった。


「これから仲良くなろうっ!ってとかで悪いんだけどごめん僕、用事思い出して、行かなきゃなんだよね…」

「あっ!そうなの〜?残念。もっとお喋りしたかったんだけど〜まぁ、後でメールしてよ」

「うん。わかった」

僕は急いでその場を立ち去った。

立ち去る時に置いていた日焼け止めを倒してしまった。

用事なんてない。

嘘だ。

ただ僕はトントン拍子で話が進んでいって、

怖くて逃げただけだ。

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