エピローグ


「水戸さん、可愛い」


「ちょっ、もうそれやめて!」


 ラブホテルのベッドの上。



 甘く囁かれる言葉に照れながら、抱き締めてくれる腕の温もりに思う事がある。



 一度目の天川智明からの告白は覚えてないけど、でもきっとその愛情がしっかり伝わるくらい真剣な告白だったんだろうって。



 だからきっとあたしはその時、恋に落ちたんだと思う。



 ホテルに誘ったのは酔った勢いだったにしても、確実に恋に落ちてたんだと思う。



 じゃないと納得出来ない。



 何とも思ってない相手とヤっちゃう自分に納得出来ない。



 だからこそ、頭はすっかり忘れた事を、心はしっかり覚えてて、どうしても、どれだけ酷い男だと思っても、何故か気になってたんだと思う。



 絶対そうに違いない。



 今はそうだと確信してる。



「可愛い」


「は、恥ずかしいからやめてってば!」


「可愛い、水戸さん」


「そ、それに『水戸さん』もやめて!」


「……くるみ?」


「…………うん」


「くるみ、可愛い」


「だ、だからそれはもういい!」


「何で? 愛情たっぷりだろ?」


「で、でも恥ずかしいし、照れ臭い!」


「ああ、それなら」


「うん?」


「くるみ、愛してる」



 囁かれる甘い声に、照れ臭さから逸らした視線の先。



――時計は零時を回っていた。





 くるみさんの不運な一日 完

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くるみさんの不運な一日 ユウ @wildbeast_yuu

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