手伝いは、積極的に行う方向へと変わった

白鷺(楓賢)

本編

子供の頃、僕は家の手伝いに対して消極的でした。親に何度も頼まれて渋々手を動かすことがほとんどで、自分から進んでやろうという気持ちはあまりありませんでした。手伝うことは面倒だと感じていたし、どうせ誰かがやってくれるだろうという甘えもあったのです。


しかし、両親が持病を抱えるようになり、確実に体力が衰えていくのを目の当たりにした時、僕の中で何かが変わりました。それまで当たり前だと思っていた両親の健康が、もはや当たり前ではないことに気づき、自分がもっとしっかり手伝わなければならないと強く感じたのです。


両親は力仕事ができなくなり、掃除や重い荷物の運搬など、日常的なことも負担になっていることが分かりました。それを見た僕は、これまでの態度を改め、少しずつ家の手伝いを増やしていくことにしました。最初は自分でも慣れていない作業に苦労することもありましたが、徐々に手際も良くなり、手伝うことが自然なことだと感じるようになっていきました。


例えば、掃除機をかけたり、買い物の荷物を運んだり、ゴミ出しをしたりといった日々の小さな手伝いが、次第に両親の生活を楽にしていると感じるようになりました。両親が「ありがとう」と感謝の言葉をかけてくれるたびに、僕自身も嬉しくなり、もっと積極的に動こうという気持ちが湧いてきたのです。


この経験は、職場での僕の態度にも影響を与えました。家で手伝うことが日常になったことで、仕事でも他の人のサポートを進んで行うようになりました。頼まれる前に気づいて動いたり、ちょっとした雑用を進んで引き受けたりすることで、職場でも感謝される場面が増えました。


とはいえ、手伝いを続ける中で自分の体力の無さを実感することも増えました。重い荷物を運ぶ時に息切れしたり、長時間の作業で疲労感を覚えたりと、体力的な限界を感じることもしばしばあります。そんな時は「もう無理かもしれない」と思うこともありますが、それでも両親や職場の人たちのために役に立てているという喜びが、僕を奮い立たせます。


手伝いを通じて感じたのは、人に喜ばれることの大切さです。家でも職場でも、僕が何かを手伝うことで誰かが少しでも楽になる。そんな当たり前のことが、以前の僕には見えていなかったのかもしれません。今では手伝うことが、ただの作業ではなく、感謝される瞬間や人との繋がりを感じられる大切な行為だと考えています。


これからも、体力の限界を感じながらも、自分のできる範囲で手伝いを続けていこうと思います。手伝うことで得られる喜びと、成長の機会を大切にしながら、周りの人に少しでも貢献できる自分でありたいと願っています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

手伝いは、積極的に行う方向へと変わった 白鷺(楓賢) @bosanezaki92

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画