日記 ③
2024年 4月12日(金)
今日は教会に行きました。お母さんに連れられて子どもの頃から行ってたけど、おさるさまが嫌がるからきっともう行くことは無いと思います。告解で霧華お姉ちゃんのことを話しました。でも、何をどれだけ話しても神父さまの記憶には留まりません。わかっていました。おさるさまが教えてくれたから。ただ、自分の心の整理のために話しておきたかっただけです。
まだすっきりしないので、ここに霧華お姉ちゃんのことを書いておこうと思います。私だけは霧華お姉ちゃんのことを一生忘れられないらしいけど、今の私が感じていることを記録しておきたいから。あと、これを見られても、どうせお父さんやお母さんには読めないから。
霧華お姉ちゃんとの思い出はあまりありません。1歳しか違わない姉妹なんて普通はもっと仲が良いんでしょうけど、私は霧華お姉ちゃんに可愛がってもらった記憶はこれといってありません。小学校に上がった頃から、一緒に暮らしていなかったからです。
霧華お姉ちゃんはおじいちゃんとおばあちゃんの家に住んでいました。おじいちゃんとおばあちゃんは元々、一番上の
私はその頃2歳で、花菜お姉ちゃんのことはぼんやりとしか覚えていません。だけど、花菜お姉ちゃんの明るい笑い声はなんとなく覚えています。霧華お姉ちゃんのような明るさ。花菜お姉ちゃんのことが頭にあるから、私は霧華お姉ちゃんのことをただシンプルに“お姉ちゃん”と呼べなかったのかもしれません。
おじいちゃんとおばあちゃんの家は、うちのアパートから歩いて20分くらいの場所にあります。私が遊びに行った回数はお母さんに連れられて行った数回ほどですが、とっても綺麗な家で行くたびに羨ましくなりました。玄関を通ると1階と2階が吹き抜けになった、開放感のある広いリビングがあります。リビングの横の子供部屋も大きくて、こんな家で育ちたかったなと心から思いました。私には子供部屋なんて無いから。昔からずっと、リビングの一角にある勉強机の周辺が私のスペース。本当に息苦しい。自分の空間が欲しい。
自分の部屋を可愛く飾り付けていた霧華お姉ちゃんがどれだけ妬ましかったか。恵まれた環境で暮らせてたくさん愛されて友達に囲まれて毎日楽しそうにしていた霧華お姉ちゃん。なんで私はああじゃないのかと何度思ったことか。自分はただ運良くうちから出られただけなのに、私のことを貧乏だのボロアパート暮らしだのと馬鹿にしてくるところ、ずっと嫌いでした。
思えば、霧華お姉ちゃんが私と話す時はいつも悪口を浴びせてきたものです。私をストレスのはけ口にしてたんだと思います。放課後、通学路で私を待ち構えていて、私の姿を見つけると寄ってきてシャツが黄ばんでるだとか、安いシャンプーを使ってるから髪がぎしぎしだとか。あんたのトリートメントだって自分の金で買ったものじゃないだろって、言い返してやりたかった。それができなかったのは、私の気が弱いからです。あの日、おさるさまと出会った日もそうでした。雨の日で、突き飛ばされて何度も蹴られて制服が泥で汚れたのに何もやり返せなくて。
でもあの日、おさるさまが言ってくれたんです。
お姉さんのこと、消してあげましょうかって。
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