風俗嬢。

柊 こころ

嬢、そして黒服目線。


「こんにちはー!失礼しまーす!」


「おっ可愛い子来たねぇ」


「嬉しいですー!あ、料金いいですか?


18000円になります」



90分、一時間半を18000円で買われる咲(さき)




「おつりありまーす」







私は






「談笑少しします?シャワー入ります?」





お金で買われる







「じゃあシャワー行こうか」





だ。





感じない身体

もう麻痺しているのだろう。


何をされても上の空の喘ぎ声。


「咲ちゃん、かわいい」

「ありがとうございます、照れます」




なんて、言い慣れた言葉を

お客様は振りまく。


それなら私も、と

言い散らかす。



「咲さん、今日のお給料です。」


封筒の中に入ったお金を見ると、ホッとする。






ああ、まだ生かされてる。




そんな気分だった。




本指名・写真指名が多いからフリーのお客様はいないけど

それだけでは満足もいかなかった日も多々あった。



ふと、我に返るときがある。




「あれ?私、なんで身体売ってるんだろう?」



って。





そうだった。

私は誰かに必要とされたいんだった。





親にも必要とされず


先生にも必要とされず


彼氏にも必要とされず


この街で風俗をやろうって決めたんだ。




やってやろうって

必要とされようって




恋愛は二の次で。




よく、分からないけど

幸せになるって決めたんだ。



にぎやかな繁華街


そこに佇む事務所。



今日も笑顔を振りまくために


「おはようございます」



「咲ちゃん!今日も指名で埋まってるからよろしくね!」




「はい!ありがとうございます!」




この街で生きることを決めたんだ。




‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐




店舗型のヘルスの内勤をしている私。


女の内勤も、最近では違和感はない。


むしろ、やりがいを感じている。




「やー、ゆりあまた遅刻か当欠だ。




客はフリーだけでいいかな。」


「…ゆりあさん、可愛いのに勿体なくないです?」


「まともに出勤できない子は当然、このとおりフリー要因だから

店も推すことはないよ。


足手まといになるから。


それなら、保証付いてる子を優先にしないとね。」



確かに合っているのかもしれない。


あり触れたこの世界

当日欠勤を当たり前にされたら

こちらとしても困る。


客商売、という商売の中で


不要なものは不要扱いにされるだけだ。


それを皆、自分だとは思わない。




なんてことを考えながら、ひたすら業務用のタオルを

丁寧に畳んでいく。



5個セットずつ畳んで

交互に置いて

それだけでも冬なのに、汗がかく。



「…でもキャストさんも疲れてるよなぁ」



と、考える私も、元キャスト。



「咲!ローション足しておいて!」


「あ!かしこまりました!」



疲れた、なんて言ってられないが

嬢のためにしなくてはいけない。


私も、元嬢だから

少なからず気持ちはわかるんだ。



当欠罰金がないだけいい。


だけど放置されやすくなるというのも、知っている。





結局、私は


当日欠勤・無断欠勤を繰り返し

お店を辞めて、逆にスタッフとして雇ってもらうことになったのだ。




「売れていた、あの時代が懐かしい」



なんて、呟きながら



今日も女の子のために、私は動く。



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風俗嬢。 柊 こころ @viola666

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