第6話 最終話 マルセイユ~帰国 修正版

※この小説は「南フランスを旅して」の修正版です。実は、パソコンの操作ミスで編集中に保存できなくなり、新しいページで再開した次第です。文言や表現を一部修正しています。もう一度読み直していただければと思います。


トラベル小説


 木村くんと二人でおいしい朝食をとり、ホテルオーナーにあいさつをし、マルセイユに向かった。2時間ほどでマルセイユに着き、昼食をとろうということになった。

 マルセイユの中心街に入り、巨大ショッピングセンターの駐車場にクルマを停めた。11時前なので、レストランはまだ開いていない。二人でぶらぶら歩きながら店をさがした。マルセイユなので、名物のブイヤベースが食べられる店をさがしたが、見つからなかった。元々は漁師料理なので、こういう高級レストラン街ではないのかもしれない。オイスターの店を見つけたが、生ガキを食べてあたってしまうと後がつらいのであきらめた。日本に帰ってから食べることにした。

 すると、日本料理店を見つけた。値段もそんなに高くない。店の名前は「ocha」という。日本人がつけた名前とはとうてい思えない。店が開いてすぐオープン席に座った。メニューを見ると「うどん・そば・寿司・てんぷら」とある。まるでフードコートの雰囲気だ。食欲はあまりなかったので、やきそばを食べることにした。でてきたやきそばを見てビックリ。ラーメンどんぶりででてきた。二人で驚きの表情をしてしまった。こっちの人が考えそうなことだ。でも、味はふつうのやきそばだった。食べ終わって、やきそばを作っていた東洋人に

「 Vous etes Japonais ? 」(日本人ですか?)

 と聞いたら、

「 Non 」

 という返事がきた。どうやらK国人らしかった。

 テラスに出て、海の風に気持ちよくあたっていると、目の前にイフ島が見えた。巌窟王の舞台となったイフ城塞である。時間があれば寄ってみたいと思っていたが、今回は外から見るだけにした。

「木村くんはこれからどうするの?」

「あと1週間ヨーロッパにいます。ベルギーに行こうかと思っています」

「いいね。花にはちょっと早いけど、食べ物はおいしいよ。ムール貝とアメリカンは絶対食べた方がいいよ」

「アメリカンってコーヒーですか?」

「いや違う。タルタルステーキ。いわばユッケだね」

「日本ではユッケ食べられなくなりましたからね。楽しみです」

「それで来月からは何をするの?」

「教員をします」

「教員!」

 私は素っ頓狂な声を出してしまった。木村くんの風体から想像できなかったからである。今回はまともななりをしているが、ドイツで会った時はヒッピー同然のバックパッカーだったのだ。

「これでも中学校国語の免許をもっているんですよ。専攻はドイツ文学ですが、一応文学部出身ですから」

「そうだったな。でも、なんで5月から?」

「産休の先生の替わりですよ。3月までそこの学校で講師をやっていて、今回も声がかかったんです」

「そうか、木村くんは中学校の先生か。一度見てみたいものだな」

「あー、バカにしていますね。結構オレ人気あるんですよ。いろいろ経験していますから」

「たしかに経験豊富だね」

 と私はニヤニヤしながら答えた。

「全く木村さんにはまいるな。ちょっとトイレに行ってきます」

 と彼は建物の中に入っていった。私はイフ島をながめながら巌窟王の原作である「モンテ・クリスト伯」を書いたアレクサンドル・デュマの心境になっていた。

 そこに木村くんが青い顔をしてもどってきた。

「木村さん、やられました」

「やられた? なにを?」

「強盗ですよ。トイレから出ようとしたらナイフを突きつけられて、Money と言われました」

「やられたか!」

「はい、それでポケットを指さしたら、そこに手を突っ込んで100ユーロを奪っていきました。トイレに行く前でしたらちびっていましたよ」

 私は笑いをこらえながら

「無事でよかったじゃないか。これで生徒に話すことがひとつ増えたじゃないか。警察には?」

「警察はこりごりです。こっちは被害者なのにいろいろ聞かれるのはうんざりです。もうマルセイユを離れます」

「じゃあ、いっしょの飛行機でベルギーに行くか?」

「席が空いていたらそうします。オープンチケットをもっているので」


 レンタカーを返し、15時のブリュッセル行きの飛行機に乗った。木村くんも乗れたが、席はだいぶ離れた。1時間ちょっとでブリュッセル到着。21時の日本行きにはまだ少し時間がある。鉄道に乗ってわずか2駅の中央駅に行き、木村くんを街のインフォメーションに連れていった。かつての赴任地なので地理は詳しい。中央駅近くの安宿を見つけ、そこで彼と別れた。日本での再会を約して・・・。


あとがき


 この小説は、私が2017年4月に南フランスを旅した時のことを元にして書きました。一人旅だったのですが、そこに木村くんという相棒を加えて、二人のやりとりで小説にしました。訪問したところや食べた物はすべて私の旅の記録です。ガイドブックではわかりえないフランスを知っていただければ嬉しく思います。

 次回作は「韓国城めぐり 修正版」です。文禄・慶長の役で造られた日本風の城「倭城(わそん」も出てきます。韓国の新たな魅力を感じてみてください。  飛鳥竜二

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

旅シリーズ4 南フランスを旅して 修正版 飛鳥竜二 @jaihara

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ