第5話 ルルド~カルカッソンヌ 修正版

※この小説は「南フランスを旅して」の修正版です。実は、パソコンの操作ミスで編集中に保存できなくなり、新しいページで再開した次第です。文言や表現を一部修正しています。もう一度読み直していただければと思います。


トラベル小説


 ホテルというかペンションの朝食がおいしかった。客は4人のみ。もっとも2部屋しかないから無理もない。オーナーの心づくしが感じられる朝食で、パンやコーヒーがおいしいのはもちろんのこと、手作りクッキーが絶品だった。お店でだしてもいいと思う味である。

 そこから1時間ほどで、聖地ルルドに着いた。目的はルルド城塞であるが、街全体が聖母マリアの復活地ということでにぎわっている。地下駐車場にクルマを停め、まずはルルド城塞に向かう。行くとガッカリの光景が目に入ってきた。城塞の入り口に外部エレベーターがあり、そこに漢字で「歓迎」と大きく書かれている。大坂城に行って、中にエレベーターがあった時のショックを思い出した。高齢者や身障者のためとはいえ、城郭マニアにとっては興ざめである。

 エレベーターを使わずに、階段を登ると20分ほどで上にあがることができた。上は博物館になっているが、場違いな画の展覧会がされていた。城内は植物園になっており、城塞跡としての保存はされていない感がした。しいて言えば、狭間から見える景色が城塞らしさを見せていた。ルルドの教会や聖地がよく見渡せることができる。

 下に降りて、昼時だったのでイタリアンレストランに入った。比較的すいていた。そこでフライドチキンのランチをを注文した。味はそこそこという感じだった。観光地で味を期待するのはどだい無理な話である。

 ルルドの教会に行ってみた。聖地らしい雰囲気を漂わせている。19世紀に、17才の少女がこの教会の近くの川沿いにある洞窟で聖母マリアの復活を見ている。数度にわたったという。彼女にしか見えなかったというが、彼女が起こした奇跡がルルドの聖地を作ったといえる。

 聖地の洞窟に行ってみたが、信者の人たちが行列をなしている。さすがに、異教徒の我々は並ぶ勇気はわかなかった。カトリック信者の聖域という無言の圧力をひしと感じた。行列の外から信者の方々の行動を見ていた。近くには少女が見つけたという聖水がながれている。信者の方はそれをありがたく飲んだり、携帯ポットに入れている。信じる者は救われる。宗教心が少ない日本人にとっては理解しがたい情景だ。

 木村くんとあまり言葉を交わすことなく、荘厳な雰囲気にのまれていた。


 ルルドを離れて、世界遺産カルカッソンヌをめざす。フランス随一の城郭都市である。1時間ほどで街に着いた。ところが駐車場がなかなか見つからない。あっても満車状態で停められない。城の裏側の水路の近くにある野原の駐車場でやっと空きスペースを見つけた。城郭からはだいぶ離れている。15分ほど歩いていくと、人・人の山である。さすが南フランス随一の観光地である。外国人がたくさんいる。狭い路地を10分ほど進むと、目的のカルカッソンヌ城本丸に着いた。本丸というより高さ20mほどの城壁に囲まれている。内城といえる。ここで入城チケットを買う。閉館までにはまだ余裕がある。木村くんと二人で内城の壁の上を歩くことにした。1周できるかと思っていたら、途中で通行不可になり、引き返せざるをえなかった。でも、街の中の様子がよくわかった。

 レストランがあいているうちに、夕食をとろうということになり、野外レストランに入った。そこで名物「カスレ」を注文した。簡単にいうとソーセージ入りの豆煮込み料理なのだが、ラーメンみたいな器にたっぷり入っている。みそ味みたいな風味で、日本人に合う味だ。ソーセージだけだと思ったら、他の肉も入っていた。どうやらマトンのようだ。ただ量が多くて、私は4分の1を残してしまった。木村くんは完食していたが・・・。

 その後、城内を散策してホテルにもどった。外側の城郭沿いに歩くと3kmほどあり、1時間かかる。半周ほど歩いて駐車場にもどることにした。城の周りは、川や運河で囲まれている。天然の水堀というところだ。さすが、モンサンミシェルに次ぐフランス第2の観光地である。見応えはある。

 明日の午後にはレンタカーを返すので、木村くんとの最後の夜だ。泊まったホテルには珍しくバスタブがあり、のんびりすることができた。2つ星で1泊一部屋2万円と手ごろな値段で、コスパは高いと思う。自宅を改造してホテルにしたからだろう。

 二人とも疲れていたので、9時過ぎには寝入ってしまっていた。

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