第4話 プロヴァンス城 修正版

※この小説は「南フランスを旅して」の修正版です。実は、パソコンの操作ミスで編集中に保存できなくなり、新しいページで再開した次第です。文言や表現を一部修正しています。もう一度読み直していただければと思います。


トラベル小説


 南フランスの中央部のプロヴァンス城(レ・ボー・ド・プロヴァンス)に向かうことにした。ところが、クルマのナビにその地名がでてこない。もしかしたら地名が違うのかもしれない。そこで地図をたよりに行くことにした。プロヴァンス城に近い大きな町への案内標識を見つけ、そちらへ向かった。木村くんは地図とにらめっこだ。

「木村さん、大丈夫だと思いますよ」

 というセリフを何度聞いたことだろうか、すると「 Chateau de Provence 」という案内標識がでてきた。そこで高速道路を下りる。まわりは樹木がほとんどない裸の丘陵地帯だ。まるで乾燥地帯の様相だ。建物は少ない。水が少ない地だというのがよくわかる。一般道を30分ほど走ると、その城が見えてきた。亀の甲羅みたいな小高い山の上に城壁らしいものが見える。

「木村さん、あれですね」

「そのようだね。ナビゲーターの木村くんのおかげだよ。ありがとう」

「どういたしまして、でも今はナビゲーターって言わないんですよ。コ・ドライバーって言うんですよ」

「木村くんはくわしいね」

「愛知の出身ですからね。WRC(世界ラリー)を見ましたから。だからモンテカルロ行きたかったんです」

「どおりで・・」


 山の中腹にある駐車場にクルマを停め、そこから城跡の入り口に向かって歩く。そこには城跡には似合わない近代的なトイレがあった。ニース城のような古代的なトイレでは困るので、用を済ませてから入城した。チケットを購入しゲートを通ると、そこには売店が並んでいる。だいぶ観光地化されている。たいした物は売っていないので、ほぼ無視をして城の内部に入る。

 プロヴァンス城は、中世の時代のこの地方の中心の城で、17世紀初めに破壊された。日本では江戸時代初めである。いわば戦国時代に活躍した城なのだ。守る側はプロテスタント、攻めるのはカトリックである。いわば宗教戦争だ。

 一部、復元された建物があり、入り組んだ構造で攻めにくいということがよくわかる。展望台から見るとプロヴァンス地方が360度見渡せる。平野の中央部にぽつんとそびえる山の利点で見晴らしがすごくいい。広場には攻城兵器が陳列してある。投石器や城門を破る亀甲車が置いてある。これは攻めたカトリック側が勝ったので、それを見せているのであろう。もっとも復元したものだが・・。

 奥の方にボーガンの試射場があった。中世の姿をしたスタッフにすすめられるままに1本撃ってみたが、弓の張りが強くてなかなかひけない。なんとか一番弱いところまでひいて、ねらいをつけて撃ったが、5m先の的にはかすりもしなかった。引き金を引いた時のショックが大きくて、ねらいがくるったみたいだった。木村くんもダメだった。そこで、スタッフに

「 Demo , sil vous plait .」(デモを見せて)

 と頼んだら、見せてくれた。ビュッと音がして、的の中央部に当たった。スタッフは

(どうだ、うまいだろ!)とドヤ顔をしていた。我々は拍手をしてたたえた。本来ならチップを渡すところだが、自分たちは外れたのでやめた。向こうもチップの無理強いはしなかった。東洋人にチップの習慣がないのを知っているのだろう。

 案内板の順番どおりに歩いていくと、牢屋があったり、兵隊の詰め所があったりした。そこには人形が置かれており、日本の武家屋敷とほぼ変わらない構成だ。以前行ったベルギーのブイヨン城には水牢や拷問部屋が中世そのままに保存されており、そちらの方がおぞましかった。やはり、ここは家族でも来られる観光地なんだなと思った。出口に来ると、そこにも近代的なトイレがあった。ホッとする半面、ニース城の古代的なトイレの方が実味があるとさえ思った。

 昼過ぎになったので、二人でピタ屋さんに入った。がら空きだし、すぐに出てくると思ったからだ。ところがピタができてきたらびっくり。量がはんぱじゃない。ひとつで2人分の量なのだ。私は全部を食べる自信がなかったので、木村くんに3分の1を取り分けた。木村くんの食欲はすごい。もっとも今朝の食事は、パンとコーヒーだけのまさにコンチネンタルスタイル。1つ星ホテルだから無理もないが・・。

 そこから今日の宿泊地であるカルカッソンヌ近郊の町へ向かった。

 途中、世界遺産である水道橋「ポン・デュ・ガール」に立ち寄った。夕刻だったので、橋を渡ることはできなかったが、橋の下までは行くことができた。高さはおよそ50m。3層に分かれており、下層は高さ22m。大きな6つのアーチで構成された基礎の部分。2層は11のアーチで高さ20m。このアーチが見事だ。上層部は高さ7mほど。ここが水路の基礎の部分である。そして水路。高さ1.8m、幅1.2m。勾配はわずか0.4%である。勾配1%だと100m行くと1mの高低差。0.4%ということは100mで40cmの高低差だということだ。とても紀元前に造られた建造物とは思えない。昼だとここを歩くツアーが開催されている。長さは275m。かつては360mあったそうだ。下から見るだけでも圧倒される。

 世界遺産のラスコーにも寄ろうと思っていたが、洞窟画はレプリカだというし、夕方に行っても入れるとは思えないので、今回は見送りとし、宿に向かった。

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