下義山さんあなたのパンツを斬ります!

カモノハシβ

第1話「突然舞い降りた美少女」

そろそろ新学期の時間だ。ほとんどのみんなが期待と不安がある。ましてや高校二年生になる時だ。未来のことを考えると地獄だ。


「春の空気は気持ちいなぁ」

俺はそっと天井を見上げた


「あれ?」

曇りのない青空が広がっている。


「今日も良い天気だなぁ」

(いやおかしいおかしい)

(昨日は真っ白の天井だったんだよ)


まるで元々天井ないと思わせるぐらいの光景が続いている。


「あっ天井が無いんだ・・・。」

俺はこの事実を受け止めるのに10分ほど時間がかかった。

空が少しずつ暗くなっている。今の時間大体正午を刺すぐらいの時間で、もっとも明るい時間帯なのに。


(雨なのかぁ)

雨だとしたら結構ヤバい。天井がない今、濡れちゃいけないものを守る手段が思いつかない。


「どうすればいいんだよぉぉ!」


俺は思わず叫んだ瞬間一筋の光が俺を包んだ。


俺はこの光を知っている。きっとUFOが俺を連れ去ろうとしているんだろう。


 なぜこんな突拍子もないことを考えているのかというと。俺は都市伝説やオカルトが好きだ。学校の図書室に都市伝説やオカルトがあると必ず読み漁っている。

(なぜ俺だって?)

(俺もわからない。)

「とりあえずこいつでよくない?」みたいな軽いノリで宇宙人が決めたに違いない。


「ありがとう地球」

「さようなら・・・」

 俺は少しずつ覚悟を決めていった。


しかし、吸い込まれもせず一筋の光が俺を包んでいるだけだった。

もしアニメであるのならばこの後にハプニングがありそうだが、来る気配はない。徐々に覚悟の気持ちが薄らいでいき不満の気持ちが強くなっている。


その時、一筋の光から何かが落ちてきている。


(宇宙人が俺に挨拶をしようとしているんじゃないのか?)

(だとしたら律儀だな。)

(でもそれぐらいのことはしてくれないと

俺の気持ちも収まらない。)


一筋の光から出てきたのは、長いロングでピンクの髪のスタイルが良い美人な少女だった。


「地球を破壊に来ましたぁ!」


彼女はとんでもないことを言った。俺は時が止まったようにただ立ち尽くしているだけだった。


「もしもーし」

「地球語じゃなかったのかな?」

「それとも地域の言葉じゃなかったんのかも」


「い、いやき、聞こえてます」

俺はこんな簡単な返答ができないぐらい動揺をしている。


「いやー聞こえてたのねぇ」

「これで地球の言葉はOKと」


「じゃあもう一度説明するね」

「地球を破壊するってところは理解したよね?」


俺はうなずいた。


「地球を破壊する。ただ破壊するっていうのは面白くないよね。」

「ここにあるのが私の核」

「全部で10個あるんだけど」

「これを切るなり破壊するなりしたら地球破壊を阻止。」

「ハッピーエンドってわけ」

「期限は1年間」

「長くてもつまらないし短くても物足りない。」

「1年間ってちょうどいいよね?」


彼女は核を宙に浮かしながら俺に質問を投げつける。


俺は返答に迷っている。

まず【よっしゃあ!やってやる!】これがラノベ・ラブコメルート。

【もうちょっと伸ばしてくれませんかね】値切り交渉ルート。

【お断りします。違う星でやってください】

逆張りルート。


最後の返答は却下。これは無責任だと思う。あと他の星になすりつけるのも良くないポイントだな。

二つ目も却下。値切ったり、交渉はどうにも上手くいった試しがない。あといやらしい。

となると一番最初の奴かぁ

(よし)

「よっしゃぁ!やってやらぁ」

自分でもびっくりするぐらい大声が出た。


「おぉ!38回目で一番いい反応だよ」

「あんまり覚えてはいないんだけど交渉する奴がいたんだけど意地汚くてさ何をするにも延長延長って」

「期限短くしたんだっけなぁ」

「後、お断りします。ほかの星でやってくださいみたいことをいうやつがいて他の星に行くと見せかけてその星を破壊をして」

「ついでにそのあとに行くつもりだった星も破壊したんだっけな。」

「言葉が漏れちゃったね」

「いいよきみの反応♪」


俺はアイツの底知れない腹黒さを感じた。


「そういえば、核を他の物に擬態できるんだけど。」

「今回は何にしようかな?」

「今までとは違う系にしよう」


アイツはパンツを脱ぎ始めた。


「いや、えっ?」


「今回はパンツ!」

「下着って呼び方の方がいいかな?」

「まぁパンツでいいか」

「パンツを10枚切ったら地球破壊を阻止♪」

「そして私は・・・」


彼女の最期の余白の部分は少し哀愁を感じた。


「あとこれも」

と彼女から受け取ったのはスマートバンドのようなものだ。


「あれ?勝手に腕に付いたんだけど?」


「それ自動で腕に付くんだよー」

「まぁ体と一体化したようなものだからね」


アイツはしれっととんでもないことを口走る。


「これ外せないの?」


「外せないよ」

「でも大丈夫大丈夫」

「腕時計にしか見えないから」


「でも外さないといけない場面が・・・」

 俺はテストの場面を想像した。


「そういう時はね見えなくなるから」

「安心して」


(なにそのご都合主義?!)


俺は思わず心の中でツッコミをしてしまった。


「それとメールは確認できるの?」


俺はこのスマートバンドのようなものの機能をもっと知りたい。


「確認できないよ」

「私の核の残りの数と現在の時間しか確認できないよ。」

「商売人じゃないからね」

 

アイツの最期の一言は少しトゲがあった。


俺はスマートバンドのようなものに愛着を覚え始めている。名前を付けたほうがもっと愛着出るな。

パンツの残数をカウントできるからパンツ時計にしよう。仮名として。

少し最後に保険を掛けてしまったが、きっともっといい名前が見つかるかもしれないからと自分に言い聞かせた。


俺はパンツ時計を見た。


《パンツの残りの数10枚》

と表示されている。


「今、本当にこの時計、残りのパンツの枚数なんてカウントするのか?」

「気になったでしょ?」

「やってみる?」


アイツは、手に握っているパンツを俺に向けてきた。


「はさみでチョキン♪チョキン♪ってすれば1枚は減るねー」


アイツは、手をはさみに見立ててジェスチャーをする。


俺ははさみを手に取り彼女のパンツを切ろうとするが、戸惑ってしまった。

パンツを切るなんてここまで生きてきた人生で一度もない。

なんなら一生やることはなかったはずなのに

こんなことになるなんて!。でもこれは、パンツではない核なんだ。切るではなく斬るなんだ。と俺は心の中で言い聞かせながら。


チョキンチョキン


俺はあいつのパンツを斬った。


「おぉ!おめでとう」

「残りは9枚だね」

「この時計も見てみなよ」


俺はパンツ時計を見た。

【残りのパンツの枚数9枚】

ちゃんと反映されている。


「あぁ!?」

「乗り円盤ずっと隠さないで置いてたままだったわ」

「なんか見られるとまずいって書いてあったわ。」


アイツは焦りながらタブレットのようなもので何かを探している。


《地球ルールその①》乗り物はすぐに隠せ又は見えなくしろ。

《あいつら地球人は回収をしてくるぞ》

《帰れなくなるからただちに隠す又は見えなくしろ》って書いてる。


「まだ大丈夫よね?」


ピッ!


アイツはリモコンのようなものを円盤に向けてボタンを押した。


「多分セーフ」

「危なかったぁ」


アイツは力が抜けたように床に座り込んだ。


「あのー俺の部屋って天井ありましたっけ?」


俺は知らないふりをして聞いてみる。


「あったあったよー」


アイツは白い板状のものを渡してきた。


「えぇーこんなに小さくなったの」

「今から大きくするからね」

「でかくなーるライトぉぉ!」


は持ってないんだった。


「でかくなーる概念」


は必要ないんだった。


「それゴミだよ。」


「なぬ?!」


「ゴミだと?!」


「キミが何か渡してみたいな顔してたから」


「俺そんな顔してたの?」

(だとしてもごみを人には渡さないよ)


「まぁ私にも責任はある」

「消失ボタンを押した責任がね」


「ヤッパリオメェカヨ」

俺は大根役者並みのツッコミをする。


「でも訳があるの」

「確か、どこに降りるか迷っていた時に急にくしゃみがしたくなったの」

「頑張ってくしゃみを止める&降りるを同時にやろうとしたの」


「ナンデドウジニヤロウトシタノ?」

 またまた大根役者並みのツッコミをする。


「そしたらくしゃみ&消失ボタンを押しちゃったの!」

「でもね屋根と天井だけで済んだし」

「まぁいいかと放置しようとしたら」

「キミが叫んでるのを見て」

「なんか面白そう♪って思って」

「君に決めたんだぁ」


「ノリで決めたんだね」


「まぁ運命みたいなものじゃない?」

「天井は直すから」


メタモルフォーゼ!


 眩い光が差し込んだ。俺はおもわず目をつぶった。


「よーし私の部屋も完成」

「目を開けていいよ」


俺は目を開けると部屋が元通りになっていた。


しかも、アイツのものは一切ない。


「クローゼット借りてるからね」


(クローゼットって服しか掛けてないけど・・)


「おっ⁉」


クローゼットを開けるともう一つの部屋がそこにはあった。


「なんかでかいぬいぐるみが置いてあるんだけど」


「かわいいでしょ」


「でかいタンスあるんだけど」

「キミのタンスよりも大きいよ」


俺のよりもひと回り、二回りも大きいタンスがそこに置かれている。


「なんか広くない?」


「あぁーキミのお部屋よりも広いからね」

「キミのお部屋って5畳の正方形の部屋でしょ」


「私のお部屋って30畳なんだけど」


「30畳?」


俺は雷に打たれたように衝撃が走った。


(俺の部屋より6倍広いの?)

(なんで俺は箱の中にいるみたいな部屋にいなくちゃいけないんだよ!)

(あぁー戻れないよ)

(行きたくないよ)

(自分の部屋)


俺は自分の部屋にひどく絶望をした。


「じゃあ戻るね」


(ここにいたらおかしくなる)

(自分の部屋に戻らなれば)


ボイン


腕に何かの感触を覚える。胸が腕に当たっているのだ。


(なにこの王道ラブコメ展開は?)

(嬉しんだけど)

(でも、ここにいると18禁コースまっしぐらだ。)

(犯罪者になってしまう)


「ここにいると俺頭おかしくなるんだよ!」


ボイン


「もうちょっとこの部屋にいなよ」


「いやおかしくなるから!」


ボイン


「お茶会しましょう」


「嫌だ」


ボイン


(くそぉー)

(抗うたびに胸が当たってるんだよ!)


「もう戻るから!」


「絶対に逃さないから」


俺の足にアイツが手を掴んでいる。

しかも、あいつはうつ伏せだ。


(これは場面が違ければいいシーンなのに!)


「絶対に逃したりはしない」


(だ・か・ら)

(やめてぇー)

(そのセリフ)


(俺、悪者みたいじゃないか)


「もう戻らないと」


俺はアイツの手をほどきダッシュでドアに向かった。


「逃さんぞ!河山 流牙」


「なんで名前知っているのおおお?」


アイツは暗殺者みたいな顔で俺を追いかけてくる。


「つーかまえたー」


「あっ?!」


俺はつまずいで転んでしまった。アイツも一緒に転んでいる。


俺は体を起こそうと前を向いた。


俺の部屋のベットが見える。

どうやら俺は出られたらしい。


バタン


「なんかすごい音がしたけど」


お母さんはノックもせずにドアを開けて俺の部屋に入ってきた。


「あらら」


俺とアイツがうつ伏せで倒れている姿を母親に見られた。


(一難去ってまた一難かよぉぉぉ!)


【残りのパンツの数9枚】

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