第2話

2012年、私は会社の営業部部長に昇格した。部長に昇格したからといって、私が会社の中で優位に立つようになったわけではない。自分で言うのもなんだが、私は人よりも真面目だと思う。悪く言えば臆病だ。怒られることが怖くて過剰に用意周到になってしまう。資料を作る時も何度も読み直して間違いがないか確認する。その性格が家族よりも仕事を優先する原因になったのだろう。

 ある日の土曜日、私は部下から預かった資料に目を通して今度の新事業のポスターとして優秀なものを選ばなければならなかった。これは長引くぞと瞬時に察した。約120枚ほどのポスター案と睨めっこする。すると、三奈が部屋の戸をノックして入ってきた。

「ねぇ、お父さん。今度の日曜日、ピアノの発表会があるんだ。」

私はまるで聞く耳を持たなかった。私はポスターに目を通しながら三奈に無愛想な返事で返した。

「日曜日は難しいな。お母さんに頼んでくれ。」

三奈は何も言わずに部屋を出た。部屋の外で微かに三奈と春栄の会話が聞こえた。春栄が私のことを庇ってくれているのだろう。「お母さんが見に行くからね。」という声が聞こえた。私はそのとき、やっぱ春栄は良い人だなと感じていた。今思えば、なんて呑気なんだと情けなくなった。

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父の日にカーネーションを @WhimsyDieu

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