父の日にカーネーションを

@WhimsyDieu

第1話

 私は、坂口康雄。48歳。都内某所のそこそこ有名な企業に勤めている。私には妻の春栄と今年の春、中学生になった娘の三奈がいる。ただ、三奈とは中々顔を合わさない。朝は早くに家を出て、夜は遅くに家に戻る。土日祝日は接待や家で資料作りをしなければならない。

 春栄には申し訳ないと思っている。三奈が生まれてから今まで子育ては春栄に任せっきりだ。どこかに連れて行ったり、美味しいものを食べさせたり、ゆっくり寝かせてあげたりしてあげれなかった。ただ、春栄はいつも優しい笑顔で「お仕事お疲れ様。」と言ってくれる。その優しい笑顔の中に儚さがあったことは当時の私は気づく余地すら無かっただろう。

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