最終話

「そんな……」


 別れは突然だった。


 あの無敵で、絶対に死なないと思っていたイルが、目の前で完全に消滅したのだ。


 短いながらも濃い、彼女との時間。


 そんな思い出の数々が、脳内を駆け巡った。


「イルちゃんが消えたっす……」

「ガオさん、どうにかして脱出しよう」


 悲しい出来事だが、今は気持ちを切り替えるしかない。

 どうにかして、生きて帰るんだ。


「グオオオオオ」


 1000体は越えるであろう、S級モンスターファフニール。

 それらが、ミナとガオに狙いを定めるかのように見る。


 そしてそのまま、光線を吐き出した。


「もう駄目っす!」

「そんな……!」


 その時であった。


「とう!」


 目の前に、ピンク色の髪の毛をした女の子が現れた。


「い、イル!? 生きていたの!?」

「ふふっ!」


 イルは得意げに笑うと、体全体を使って、ファフニールの攻撃を全て吸収した。


「死んだんじゃなかったの……?」


 目から雫をこぼしながらも、ミナはイルに聞いた。


「人間的に言うなら、一度は死んだかな! 私的には死んでないよ!」

「ど、どういうこと……? というか、今ファフニールの攻撃を食らっても平気だったよね? もしかして、わざと死んだの?」

「おお! するどいね! これには事情があってね……」


 事情?


「ミナっていつもパソコンでノベルゲームしてるでしょ?」

「してるけど……それが何か?」

「そういうので、仲のいい人達が死んで離れ離れになるシーンってよくあるじゃん! この前も、そういうゲームで、凄く感動していたから喜ぶと思って実際に再現してみた!」

「はぁ!?」


 呆れたように、声を出してしまった。

 そんなことの為に死んだというのか。


「現実とゲームは違うって!」

「そうだけど、喜ぶかなって思ってね! 喜んだ?」

「喜ぶわけないでしょ! というか、どうして死んだのに生き返ることができたの?」

「それは簡単だよ! 私はね、ここよりも上の次元、下の次元。後は過去未来といった時間、あるいはパラレルワールド。そんな感じでどこかしらに私の存在があれば、何回でも復活できるんだよ!」

「それズルくない?」

「ズルくないって! それよりも人間って、他の動物と比べて知能が高いのに、いずれは死んじゃうって考えると、よく毎日発狂せずに生きていられるよね!」

「言われて見れば……って! そんな場合じゃない!」


 ピンチな状況には変わりないのだ。

 マネージャーとして、それなりに頑張って来たつもりだ。


 ここは1つ、頼んでみよう。


「イル! お願いがある! 助けて!」

「いいよ!」


 即答だった。


「変身!」


 イルはミミズの集合体のようなグロテスクな、本来の姿へと変化した。


 今まではグロテスクなだけだったが、今はかっこいい存在に見える。


 姿形こそは違うが、まるでヒーローのように輝いてみえた。




《イルside》


 自分一人ならまだしも、ミナやガオを守る為には、少しだけ本気を出さなくてはならない。


 本来なら、地球の知的生命体を滅ぼす為の力。

 その力の一部を、今使うとしよう。


「分身!」


 人間の目では確認できないような、イルの細胞の一部が地面に転がると、それはイルと全く同じ姿になった。

 そして、その分身からまた同じように細胞が落ち、そこから次の分身が生成された。


 分身というよりは、手足のようなもので、イル自身が操作することが可能な肉体だ。


 それを繰り返し、10秒も経たない内に、1000体のイルが誕生した。


 本気を出せば、10億の分身は作れ、操ることも容易なのだが今はそこまで必要ないだろう。


「皆行くよー!」


 イル達は、次々にファフニールに襲い掛かると、1秒も掛からない内にファフニールはイルの分身体に取り込まれていった。


 全ファフニールを倒したのを確認すると、分身体を自身の体内へと集合させた。


「よし!」


 イルは人間の姿にスキル【擬態】で擬態をすると、右腕でガッツポーズをして見せた。



《吉村ミナside》


 あれから数日が経過した。


 イルの圧倒的な力を目にした時は驚いたが、今回の場合、恐怖を抱かなかった。

 宇宙人だろうと内面は重要ということだろう。


 だた、イルの内面を知らなければ、おそらく今のように友達にはなれなかった。

 外見だけでは、正直恐ろしい生物にしか見えないのだから。


 そう考えると、「見た目と中身、どちらが大切か?」といったよくある問いの答えには、「巡り合わせ」だと答えたくなる。


「ミナさん、イルちゃん! コラボの件なんすけど、いっそのこと遠くに旅行に行って、そこのダンジョンで撮るのはどうすか?」


 今はミナの部屋にて、3人で机を囲っている。

 約束したコラボをどういった形で行うのかを話し合っている所だ。


「旅行行きたい!」

「イルの力があれば、いつでも好きな所行けるでしょ?」

「皆と行きたいの!」


 両親はまだ海外旅行から帰って来ていない。

 帰ってきたら、どう説明しようか。


 それはその時考えるとしよう。







【あとがき】


一応完結です!

もし良ければ、★での評価をお願いいたします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ロリ美少女に擬態するグロテスク宇宙人、地球人抹殺の使命を放棄し、ダンジョン配信者になる~普通の女子中学生の私は、宇宙人のマネージャーに指名されました~ 琴珠 @kotodama22

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ