第14話

「本当にすみませんでした」

 千里の兄の事で全く前を見ていなかった杏奈は、前から歩いてきていたスーツ姿の男性に気づかす真正面から思いっきりぶつかってしまった。

「いえ? 僕なら大丈夫です。それより貴女は大丈夫ですか?」

 自分がぶつかったのに、男性は、杏奈の事を心配してくれた。

「はい。私なら大丈夫です。本当にすみませんでした」

 杏奈は再度謝罪をしながら、自分は大丈夫ですと返事を返す。

「ならよかった。ところで何か考え事でも」

「…はい」

図星をつかれ杏奈は、小さく頷く。

(ドジな所は全く変わらないぁ?)

「えっ!」

 なにが言いましたかと杏奈は尋ねる。

 すると、何を思ったのか…男性が杏奈の方に近づき、突然杏奈を抱きしめた。

「…あぁあぁの?」

突然の出来事に杏奈は、混乱する。

だけと、男性は一向に杏奈を離せない。それどころか、抱きしめる力が更に強くなる。

「…杏奈」

「…千里…さん?」

杏奈は、自分を抱きしめる男性の顔をゆっくり見る。

そして、5年間呼んでいなかった彼の名前を今度は、はっきり呼んだ。

「おかえりなさい」

「ただいま」

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再生結婚 もう一度あなたと なつかわ @na_tu_ka_wa

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