第2話 韋駄天の蒼穹

こいつは何者なのか、ずっと考えていた。

・親に捨てられて行き場がなかった。・いじめられていて学校から抜け出した。

・シンプル遊び相手が欲しかった。

いろいろな仮説が立てられたけど親を殺した。ってセリフ聞いた瞬間にこいつ何かおかしいなって気がしたんだ。

でも、退屈な日常が少し変わるかもしれないと胸を弾ませてしまった俺も俺で問題がある気がするけど。

聞きたいことは山ほどある。そう、山ほどだ。

「なんでみんな殺したの?俺も殺されるの?」

一番聞きたかったのは後半の「俺もいつか殺される」のか、怖くもない。

別にここで死んでも面白く死ねたなってなるにきまってる。

だって、この人生、なんだかんだ言って楽しんで生きているつもりだからだ。

「殺すかどうかは俺が決めること。俺の気持ちがいつ変わるかは俺だってわかんない。今のところはお前のことは殺さない結末で別れを迎える気がする。」

「じゃあ二つ目、日影は何者?」

「何者って言われても、ただただ楽しくない悔いしか残らないつまらない人生を送っている学生だよ。」

「学生は普通に学校に行って授業を受けている時間だぞ。」

「高校は義務教育じゃないやん、そんなんに行く必要あるん?」

「なんでお前が高校入れたか不思議だわ。」

布団の上に胡坐をかいてまるで自分の家かのように順応に対応している日影は普通に俺の本棚から漫画を取り出して読みだした。

まるで、今手に取った漫画が特別な何かのように一言も話さずに黙々と真剣に漫画を読んでいる。

「これこれ!!この矢島劣等ってキャラに憧れて髪緑なの!!」

目をキラキラ輝かせて漫画の一ページの見開きを顔の前に突き出してきた。

俺の漫画なんだから矢島劣等の存在を知らないわけないのに。

「でも劣等って不良だよね?いじめられっ子について行っていじめっ子ぼこぼこにするってい・・・ん?」

なんか聞いたことのあるあらすじなような気がする。確か劣等は主人公の山岸がいじめられて公園でボーっとしてたら電柱の上から・・ん?デジャブ?

「そう!!これがしたかったこと!で、その後山岸は劣等に押されて街の政治を守る不良集団「韋駄天弩嘉」に入る!!」

「ってことは・・・?」「そう!!」

俺ん悪い予感は当たってしまったようだ。絶対この後こいつは一緒に不良集団作ろうぜ!とか言い出すんだろう。

「お前を総長に任命するから俺のチームに入れ!!」

ん?聞き間違えかな?俺が総長とか言われた気がするんだが、気のせいだよな?

「まぁ、入ることは置いておいて、何で俺が総長なんだ?俺はそんな立ち位置になれるような力を持っているように見えるか?」

「見える。だから入ってほしいんだ。

真剣なまなざしに急激に変わったことにより俺は声が出なかった。本気何度と思った。

「で、、、そのチーム名は?」「入ってくれるのか!さすがだね!」

目をキラキラとまぶしく輝かせた日影は俺の顔にグンと近づいてきた。

「チーム名は!!」「あ、、そうそう。」

「俺たちのチーム名は「韋駄天の蒼穹」!!総長はお前!副総長は俺!特攻隊が三人いて、「巣鈴小鞠」と「黒澤悠馬」と「五十嵐正樹」!!」

「それだけ?」「うん!!!」

少なすぎやろ。え?五人だけで不良集団とか言ってんの?まぁ、ここから増やしていけばいいか。

あれ、なんか俺乗り気じゃない?ちょっと楽しみにしてるのが悔しい

「じゃあ今からミーティングの時間!押山神社に集合!急げ!」

「あーあ、忙しい忙しい。」

俺の自転車を勝手に使う流れになり総長だからって理由で俺を後ろに乗せて白色の俺のママチャリを神社に向かってスピードを出して走り出す。

少し落ちそうで怖いが、いじめられていた側とすればこの程度の恐怖心、どうってことない。

「あ?お前が新人か?日影さんに自転車こがせやがって、なめてんのか?」

神社について早々喧嘩売られた。あいつの説明からするにこいつは五十嵐正樹かな?黒髪に赤いメッシュが左側の伸びた前髪につけられている。

「ほっときなよ、そんな弱そうなやつ。時間の無駄。」

「俺はお前の言い方に腹が立つことで体力の無駄なんすけど?」「じゃあ腹立てんなよ。」

薄い茶色のようなミルクティーのような髪色をして艶やかな長い髪の先っぽを右手でくるくるし左手でスマホを触る彼女は恐らく巣鈴小鞠だろう。

「ちょっとちょっと。もしその人がめっちゃ強かったらお前ら殺されるぞ?」

「どーせ特攻隊にも入らない一般隊員だろ。副総長は俺が戴く!

敬語を使い登場した黒澤悠馬と違い、乱暴な口調な正樹はなんか置いといていい存在だ。

いじめっ子を思い出す。

「よう!!久々!三時間ぶりだね!今日は隊の振り分けを発表するぞ!」

どこからともなくトイレから帰ってきて俺らの前に現れた日影は堂々と胸を張っている。

出てきた瞬間にみんなが姿勢を正した。俺だけ姿勢を正さなかったので睨まれてしまった。

「総長はそこにいる朱雀君!副総長は俺!他は特攻隊長だ!以上!」

「は!!!???俺じゃなくてこいつが総長!!!???」

「だから言ったのに、終わったね。」「死んだね、お疲れ様です。」

「ちょちょ!!俺が今から絞められる前提で話すのやめてもらっていい!!??」

「こいつの事とりあえず殴っていいよ!」

にこにこと日影に言われた俺は日頃のストレスをすべて吐き出す意識をして、日影に言われた瞬間に体が動き正樹のみぞおち向かって本気で拳を打ち込んだ。

「オゥェ!!??」

殴られた正樹は吐くかのような声を出してゆっくりとシュールに倒れ込んだ。

「ほら、やっぱり俺は間違ってない。韋駄天の蒼穹の中でもかなり体が丈夫な正樹も一発で終わりさ。」

「すごいっすね、日影さんでも二発ですよ。」「足なら一発だけどね!」

「足も見せてくださいよ、サンドバッグになりますから!」「骨折れても知らないよ?」

俺はすさまじい速度で悠馬の右腕に向かって足を振り下ろした。

「いっっっっった!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!???????????」

声でか。

俺は少し強いのかもしれない。


俺は一つ感情を思い出した。ありがとう。韋駄天の蒼穹。


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韋駄天の蒼穹 常磐海斗・大空一守 @tokiwa7799yanwenri

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