番外編 6:祭りの夜の秘め事

# 刃に宿る想い - 番外編 7:祭りの夜の秘め事


初夏の訪れと共に、鷹乃道場のある町では毎年恒例の夏祭りが開かれていた。色とりどりの提灯が街を彩り、屋台の賑わいが通りを埋め尽くす。


十四郎と椿丸も、道場の弟子たちと共に祭りを楽しんでいた。二人は浴衣姿で、他の弟子たちと談笑しながら屋台を巡っている。


「先生、椿丸さん、こっちの金魚すくいを試してみませんか?」


源太の声に、二人は顔を見合わせた。


「ああ、そうだな。椿丸、お前はどうだ?」


椿丸は微笑んで頷いた。


「はい、楽しそうですね」


二人は金魚すくいの屋台に近づいた。椿丸が腰をかがめて金魚を追いかける姿に、十四郎は思わず見とれてしまう。浴衣からのぞく首筋の白さに、十四郎の心臓が高鳴った。


「十四郎さん、どうかしました?」


椿丸の声に、十四郎は我に返った。


「い、いや...何でもない」


十四郎は咳払いをして視線をそらした。しかし、その瞳には欲望の火が灯っていた。


祭りが深夜に差しかかる頃、弟子たちは三々五々と道場へ帰っていった。十四郎と椿丸も帰ろうとしたその時、十四郎が椿丸の手を取った。


「椿丸、少し付き合ってくれないか」


椿丸は驚いたが、すぐに頷いた。


「はい、どこへ行くんですか?」


十四郎は椿丸を人気のない路地裏へと導いた。そこは祭りの喧騒から少し離れた場所だったが、まだ人の気配は感じられる。椿丸の心臓が激しく鼓動を打ち始めた。


「十四郎さん、ここは...」


椿丸の言葉を遮るように、十四郎が唇を重ねた。突然の口づけに、椿丸は小さく悲鳴を上げそうになった。十四郎の唇の感触に、椿丸の全身が熱くなる。舌が絡み合い、互いの味を確かめ合う。


「んっ...」


椿丸の喉から漏れる小さな声に、十四郎の理性が揺らぐ。


「しっ...」


十四郎が指を椿丸の唇に当てる。その指の感触に、椿丸は思わずその指先に舌を這わせた。


「ここは人目につくかもしれない。声を出すなよ」


その言葉に、椿丸の顔が真っ赤になった。恥ずかしさと興奮が入り混じり、椿丸の体が小刻みに震える。


「で、でも...ここで...」


十四郎の手が椿丸の浴衣の襟元に伸びる。指先が肌に触れるたび、椿丸は小さく息を呑む。少しずつ肌が露わになっていく。涼しい夜風が肌を撫で、椿丸の背筋に快感の波が走る。


「だめです...十四郎さん...誰かに見られたら...」


椿丸の声は震えていたが、その目には期待の色が浮かんでいた。瞳が潤み、十四郎を見上げる。


十四郎は椿丸の耳元でささやいた。その息遣いが耳たぶをくすぐり、椿丸は思わず身震いした。


「大丈夫だ。誰も来ない」


その言葉と共に、十四郎の手が椿丸の浴衣の隙間に滑り込んだ。温かな手のひらが素肌に触れ、椿丸の全身に電流が走る。


「あっ...」


椿丸は思わず声を漏らしそうになったが、すぐに口を押さえた。歯を食いしばり、快感を押し殺す。


近くを通る人々の足音。祭りの音楽。そんな中で、二人は隠れるようにして愛し合う。その状況に、二人の興奮はさらに高まっていく。


十四郎の指が椿丸の敏感な部分を愛撫する。優しく、しかし確実に快感を与えていく。椿丸は声を押し殺しながら、快感に身を震わせる。膝が震え、立っているのがやっとだ。


「椿丸...可愛いぞ」


十四郎の囁きに、椿丸の体がさらに熱くなる。その言葉だけで、椿丸は達してしまいそうになる。


「十四郎さん...お願いです...」


椿丸の懇願の声に、十四郎の理性が飛んだ。瞳に宿る欲望の炎が、椿丸を焦がす。


十四郎は椿丸を壁に押し付け、その足を持ち上げた。冷たい壁と十四郎の熱い体に挟まれ、椿丸は息を呑む。


「いいのか?」


椿丸は小さく頷いた。目を閉じ、唇を噛みしめる。


ゆっくりと、しかし確実に、十四郎が椿丸の中に入っていく。


「んっ...」


椿丸は必死に声を抑える。歯を食いしばり、十四郎の肩に顔をうずめる。


人々の話し声が近づいてくる。二人は息を潜めながら、動きを止めた。互いの鼓動が激しくなるのを感じる。


人々が通り過ぎていくのを確認すると、十四郎は再び動き始めた。


「は...あっ...十四郎さん...」


椿丸の声が漏れる。快感と羞恥心が入り混じり、頭の中が真っ白になる。


「声を出すなと言っただろう」


十四郎の言葉に、椿丸は自分の手で口を塞いだ。しかし、その仕草がさらに十四郎の興奮を煽る。


激しい律動が始まる。周囲の音に紛れて、二人の愛の証が満ちていく。


「椿丸...もう...」


十四郎の声が低く震える。その声だけで、椿丸は達しそうになる。


「私も...十四郎さん...!」


二人は同時に絶頂を迎えた。その瞬間、祭りの花火が夜空に打ち上がる。


花火の音に紛れて、二人の声が夜空に溶けていった。全身を駆け巡る快感の波に、二人は息を呑む。


しばらくの間、二人は抱き合ったまま息を整えていた。互いの鼓動が徐々に落ち着いていくのを感じる。


「椿丸...大丈夫か?」


十四郎の声に、椿丸はゆっくりと顔を上げた。頬は紅潮し、瞳はまだ潤んでいる。


「はい...でも、もう二度とこんなところでは...」


その言葉に、十四郎は小さく笑った。椿丸の頬を優しく撫でる。


「すまない。我慢できなかったんだ」


椿丸も微笑んだ。十四郎の胸に顔をうずめる。


「十四郎さんの...そういうところも好きです」


二人は再び口づけを交わした。長く、深い口づけ。互いの愛を確かめ合うように。


その後、二人は服を整え、祭りの喧騒に戻っていった。誰も、二人の秘密の逢瀬に気づいた様子はない。


しかし、二人の目には特別な輝きが宿っていた。それは、共有した秘密の喜びと、互いへの深い愛情の証だった。


祭りの夜は更けていく。

しかし、十四郎と椿丸の心に灯った熱は、まだまだ冷めそうにない。


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