第68話

「親友をわたしが横取りしたもんだからすねてるんでしょ」

「――お前さ」

 激しく脱力する。

 どっちかいうとその逆なんだけどなと思いつつ、そんなことは言えずにいると、



「いいわ。大事なお友達を返してあげる。わたし、この通りの画家さんたちの絵を見てくるから。ゆっくり話したら」

 ふふっと笑いをこぼして、ぽんとロジェの肩をたたき、

「あの人があなたの親友なの、よくわかる」

「……は?」



 謎めいたことを言うと、ステップを踏むごとく軽やかに行ってしまった。

 直後、悠々と歩み寄る足音と、ふっと笑う声がして。

「わかりやすい嫉妬だな」

 見るとエルネストが、悠然とした笑みで見下ろしていた。

「……ふん」

 胸の中で毒づく。

 こいつは、昔から、ほんっと、腹立つ、と。

 恋愛なんか一ミリも興味ない独身貴族志望のくせに、やたらモテやがって。

 ついでに言うと成績もよくて。

 いけすかない感じだ。

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