第46話

 飴色の液体が、アップルグリーンの瞳の中でゆらゆらとうごめく。

「ほんとうにそんなことをすれば、彼がヴェルレーヌ宝石社の偉い人から手ひどい罰を受けることは必至でしょう。きっとひどく脅されているに違いないの。……わたしには、彼が本心から冷酷な管理官をやっているとは――」

「だとしても」

 急に鋭い声に遮られて、プレヌはゆっくりと保存用棚に顔を向ける。



「権力に屈して殺しているなら同罪だ」

 タルトを乗せる手を止め、直立しているロジェの瞳には、いつにない激しい怒りが窺える。

 そしてなにか、一つまみほどの隠せない苦味。



「許されることじゃ、ない……」

 テーブルに視線を落としたプレヌは静かに肯定した。

「そうかもしれない」

 それでもまた、瞳を上げる。

「でも。――でも」

 今、人々が生きているのは良心や慈愛が道理をきかせない世の中だということは、身を持って知っている。

 アップルグリーンの瞳が、見いだせないなにかを必死に探すようにすがめられる。

「良心の呵責に苦しむ人がいるならまだ、世界は救いようがあると思うの」



 彼の虐げられた心を緩められたらと、思う。

 エスポールが自分にそうしてくれたように。

 再びテーブルに落とされた視線を追い、二、三瞬きすると、ロジェはふっと薄く微笑んだ。

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