第43話
「手伝うわ」
はりきって腕まくりするも、ロジェの手のひらで静止されてしまう。
「残念ながら、もうできてる」
あっとテーブルの上を見れば、ショコラタルトの上に紅色に塗った桃のコンポートが美姫の唇のように鎮座する美しいタルトができあがっていた。
思わず両手のひらを胸の前で合わせ、問いかける。
「とってもきれい。作品名は?」
「モン・クール――大切な人」
「まぁ、ロマンチック~――はむっ」
一口大にカットされたタルトとそのうえに乗った花弁をひょいっと口に入れられた。
ショコラのムースとほのかに甘酸っぱい桃の果肉が混ざり合い、口の中でハーモニーを奏でる。ほのかに香るのは柚シロップだろうか。
「感想は?」
いたずらが成功した子どものように笑う彼に、飛びつかんばかりに言う。
「おいしいっ。商品価値ありよ!」
当然とばかりに悠然と微笑んだロジェは、残りの部分を小皿に乗せて出してくれる。
ちゃんとケーキ用フォーク付きだ。
誘惑には抗えず、調理台の前に椅子を持ってきて腰かける。
もぐもぐと口を動かしスイーツを堪能しながら、プレヌの口をついて出るのはぼやきである。
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