第31話
肝心のエスポール捜索にはいまいち気概が足りないものの、細かく気遣われ優しくされるのは悪い気分ではない。
悪い気分では、ないのだが。
プレヌは知らず、自身の膝を手繰り寄せる。
――落ち着かない。
甘く囁いてみたり、おどけて笑ったり、かと思えば挑戦的な顔をしたり。
彼の仕草にやたらと心がざわついて。
そんな自分の反応にいちいち戸惑ってしまう。
こんな調子で人探しなんてできるのかと困り顔で、それでも目を皿のようにして、それらしき人物を探してみる。
ふいに一人の人物に、目が留まった。
エスポールだと睨んだのではない。
サスペンダーに、短い褐色の短髪。それは十にも満たぬほどの少年だった。
広大な泉の縁を片足を引きずりながら歩いている。
――水場の前を危うい足取りで。だいじょうぶかしら。
はらはらしながら見守っていると、案の定彼はダッシュの途中でバランスを崩し、小さな身体が泉に投げ出される。
プレヌは戦慄した。
公園の門からやってくるとき泉の前を通ったがけっこうな深さではなかったか。
そう思った瞬間。身体が動いていた。
パンプスを蹴り上げてとっさのところで少年を抱きかかえ、プレヌは小道に倒れ込んだ。
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