第27話

 髪結い部屋から店頭へと戻ってきた自分が様変わりしているのはプレヌも認めざるを得なかった。



 一本縛りの髪を解き放ち、サイドから三つ編みを束ねたハーフアップ。髪にバニラの花の髪飾り。香水もお連れ様指定のピュアバニラを耳元につけている。

 ドレスの他にも香水やら宝石やら買いあさり、すべて滞在先らしいホテルに送りつけたロジェは身軽な鞄一つでプレヌを見下ろし破顔した。



「予想以上だ。香りもやっぱりよかったな」

「え。ええっ、ちょっと」

 彼が、近づいてくる。

 自ら仕立てた希少品を噛み締めるように香りを楽しむと、ロジェはそっと囁いた。



「おいしそうで、食べたくなる」

「なっ」



 プレヌはまたもや赤くなりそうな顔を、必死の咳払いでごまかした。

 ロジェはいかにも何気ないふうに呟いているが、こちとらどきまぎしっぱなしだ。



「ねぇ、ロジェ。あなたはふつうに支払いを済ませていたけど、こんなに着飾る必要あったのかしら――」

 唇を右手の親指で止められ。

 左手で鏡を掲げ見せられる。

 そこに映っている彼女に――はっと、プレヌは息を呑んだ。

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