第15話
決意表明は、ソフトな笑い声によって迎えられた。
「いいんじゃないか。死ぬまでの暇つぶしには、パリは十分すぎる都だ」
「そう、死ぬ前に」
チョコレート色の髪を揺らして笑う彼をひたと見据え、プレヌリュヌは宣言する。
「だめもとでもいいからやっておきたいことがあるの」
突如現れた命の恩人を前に、彼女が呟いたのは、やはりこの名だった。
エスポール・ディアマン。
「彼に会いたい。約束の場所には来てくれなかったけど、今まで手紙で励ましてくれたことに一言お礼が言いたいの」
船を出し異国に逃がしてくれると約束してくれた文通相手だと説明すると、ロジェは苦笑して小さく息を吐く。
「顔も知らない、情報といえば筆跡だけの相手をどうやって探すんだ」
「それは」
ぐっとくちごもり、数秒後、苦し紛れの答えを見つける。
「そう! エスポールの首には奴隷の反乱を沈めるのに争ってできた傷跡があるの!」
その名が出た途端、他の多くの人と同じように、彼もまた顔を顰めた。
「死にたがってたわりに、とんだ猛者だな。殺人享楽者に助けを求めるなんて」
激しく首を横に振り、プレヌリュヌは力説した。
「彼はそんな人じゃないわ。夫から殴られどおしだったわたしを手紙で励ましてくれたの」
「死のうとする奴隷は切り捨てる。請われれば殺しもする。そんなやつの言葉なんかたかがしれてる」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます