Act18.夢未 ~差し伸べた手の火傷~
第42話
その直後、わたしはさっそく捜査をはじめることにしました。
気分は少女探偵ホームズ。
捜査の基本は足とばかりに雑誌コーナーを巡っていたら、やっぱり、まだいました。
ショートカットの髪に、涼しげなブラウスとパンツ姿。バッグにおしゃれなくまさんをつけた、小夏さんです。
「あら」
こちらから呼びかけるよりも早く、小夏さんはぱたんと雑誌を閉じて笑いかけてきました。
「幾夜の『小さな同志』さんね」
「え?」
なんのことかと首をかしげると、くっきりした黒い瞳がまたたき、サーモンピンクの唇が弧を描きました。
「あいつがそう言ってたの」
「――」
同志という言葉。それはふしぎな気持ちをわたしに与えてくれました。恋人と言われるのとはまた違った深く満たされていくようななにか。
この気持ちに名前を付つけられずについ黙っていると、小夏さんは天井をあおいで大げさにため息をつきました。
「ショックだったな。女っ気なんかぜったいないと思って安心してたのに、幾夜にこんなかわいらしい友達なんて」
肩をすくめて首をふる、どこかコミカルなしぐさ。
悪い人じゃないのかもしれません。
そう思ったことが、次の言葉をわたしの口から押し出しました。
「……わたしも、ショックでした」
うつむいて、ぽろりと。それは、率直な気持ち。
「星崎さんに、きれいな彼女さんがいたんだって思ったから」
しばらく沈黙が続きました。
「ね」
たった一音。けれど張りのある明るい声色に顔を上げました。
「ちょっと話さない?」
きれいに薄くお化粧した、華やかな顔が、目の前で笑っていました。
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