Act13.夢未 ~復讐なんてしない~

第28話

 その数日後、星崎さんといっしょに、病院に行きました。



 お父さんに殴られてつらかったこと、たまに記憶がとぎれることがあること。

 精神科の先生は、穏やかなおじいちゃん先生で、それはつらかったねと親身に話をきいてくれました。

 すぐに病名の診断が出せるわけではないけれど、ひとまず、不安なときに飲む薬をもらいました。週に一回、その医院に通うという取り決めや、両親から暴力を受けているときの相談窓口について、星崎さんは長らく先生と話していました。そして、わたしたちは病院をあとにしました。



 彼の横顔を見ながら、切ないなにかが込み上げてきます。

 星崎さん。

 真剣にお医者さんとお話する彼に、語り掛けます。

 ごめんなさいとありがとうと、そして。



 たとえ病気であったとしても、お父さんに何度、殴られても。



 わたしは、復讐なんてしません。



 きっと、しない。

 だって神様はこの人を、わたしに遣わせてくれたんだもの。

 どうして復讐なんて、考えることができるでしょうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る