第25話
先生。
無知は強者への隷属、賢くあれとあなたは言いました。
札束を握り締めると、そのこぶしでその顔面に打ち込む。
でも、下卑た手段しか功を奏さないほど世の中が落ちぶれていたなら。
『ハムレット』の登場人物の言う、腐敗しきった濁世なら。
ばらばらと、札束が倒れた男の周囲に散った。
オレたちは、どうしろと言うんでしょうか。先生。
「……せいぜい、そのはした金と仲良く伸びているんだな」
最後に男に吐くように浴びせた彼の声は、ぞっとするほど冷ややかだった。
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