Act9.夢未 ~恋のたしかさ~

第16話

 本野夢未、一六才。

 ついに、思い切って告白しました。

 友達の助言通り、キュンとしたタイミングで、です。

 さて、その結末は……。

 息を止めて、返事を待ちます。

 神様、お願いです。

 どうか彼が、うんと言ってくれますように。

 星崎さんはしばらく黙ってこっちを見て、目を見開いていましたが、そのうちにふっと微笑みました。

 返ってきたのは、いい予測とも、悪い予測ともちがった言葉でした。



「かわいい夢ちゃん。今から焦るのはやめて、そういうことに関してはよく考えたほうがいいよ」

「え?」



 焦る?

 星崎さんは、なんのことを言っているんでしょう。

「お父さんとオレのほかに、きみはどんな男の人を知ってる?」

 そう言われてひとまず考えることにします。

「うーん」

 クラスの男の子たちは、あんまり話したことがなくて、よく知ってる子はいません。

「そうだよね。でも、これからたくさんの人に会えばそれだけ、すてきな人に会う確率は高くなるわけだ」

「星崎さん……」

 わたしが子どもだから、はぐらかそうとしてるのかなとも思ったけど。 

 彼はいつものように真剣でした。

 そうやって話してくれるときはいつも、言葉が心にすとんと入ってきて、だからこの人がとても好きなのだけれど。

 このときばっかりはいまいち腑に落ちないままでした。

「その人に出会えば、夢ちゃんはオレのことなんか忘れちゃうんだろうな。それも寂しいけどね」

 それでわたしは、知っている男の人の数と、恋のたしかさが比例するのかどうかどうか、考えてみました。

 でもどんなに考えてもよく、わかりませんでした。

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