第5話

「また会ったね」



 つとめて穏やかに言いながら、内心少なからず動揺する。

 夕方会が終わってからずっとここにいたというのか。

 さきほどまで彼女が開いていたページは物語の終盤に差し掛かっていた。



「もう九時だから、家に帰らないといけないんじゃない」



 そう告げたとき、少女の目がぱっと開かれた。



 その中に、少なからぬ怯えを見てとる。

 射抜かれるのを待つ小動物のように全身が固まっている。

 帰らなければと口にしただけで、つい今しがたまで、きらめきを放っていたその視線は完全に途絶えた。


「……お父さん、迎えにきてくれるって言ったんだけど」


 やっとそう言った小さな口元は、かすかに震えていた。

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